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どのような服装を選ぶかについては、二つの異なった考え方がある。
ひとつは社会が期待するように、装うべきだというのもの。古い表現だが、いわゆる「TPO」というやつだ。
もうひとつは自分の着たい服を、着るというもの。ありふれた言いかただが、「個性」というやつだ。
こと服装にかんしてヨーロッパというところは、後のほうの考え方が強い。ビジネスマンだって、いちおうスーツにネクタイをしてはいるが、それでもどことなく遊び人風の着こなしだ。すくなくとも、日本やアメリカの基準では。だからTPO派にとってヨーロッパというところは、どちらかといえば張り合いのない場所といえる。
さて、僕らがスペインで暮らそうとするときは、観光客という究極の遊び人として だから、それこそ何を着たってよい。 いや、ヌーディスト・ビーチのように、「何も着なくてよい」場所だって、珍しくない。
そこまでいかなくてもビーチ・リゾートなら、ほとんど何も着ていなくても、通りを歩くことができる。
ところで、べつに着るものなどどうでもよいという人も、けっこう多いかもしれな い。
もしそう思うのであれば、いくつかの実用的なアドバイスをしたい。「これを着 るのは俺のポリシーだ」という人には、べつに何もいわない。他人の行動にやたらと
口出しないのも、ヨーロッパ流だからだ。
それから、けっこう忘れてる人も多いけど、スペインもヨーロッパの一部だ。
道具としての衣服
TPOや個性にこだわらなければ、服は道具のひとつにすぎなくなる。道具であれば 、「体が楽なこと」が、選択の基準となる。
僕の子供のころは、そんな考えで服を選んでる人が、けっこう多かった。具体的にいうと、ランニングシャツ(半死半生語)にステテコ(死語)で、東京の(ただし場末だが)街中を歩いている姿も、珍しくなかったということだ。
ヨーロッパのリゾートでも、だいたいそんな気分で、服が選ばれている。
もちろん金持ちの集まるリゾートでは、そのかぎりでないが、ヨーロッパではリゾートが、ほとんどすべての人びとの必需品だから、そうした場所はかぎられている。圧倒的多数のリゾートは、一般大衆の遊び場なのだ。
だから普通のリゾートでは、ランニングシャツとステテコの現代版とでもいうべき 、Tシャツ(camiseta)にショーツ(calzones)というのが、装いの定番となっている。
履物はもちろん、ゴム草履の親戚、サンダル(sandalias)だ。このいでたちで、どこにでも出入りできる。
例外は一部のレストランとクラブだろうか。それでもTシャツを襟のついたシャツ(ポロシャツを含む)に、ショーツをトラウザース(ジーンズを含む)に、そしてサンダルを革靴(ウォーキングシューズを含む)に換えれは、まず出入りを拒まれることはない。
こうした例外があるのは、ヨーロッパ(この場合はアメリカも含む)に昼と夜で服 を着替えるという習慣があるからだ。
たとえばオーケストラの団員の服装も、昼の公演であればディレクターズ・スーツ (上着にしっぽがついていないモーニング)、夜であればタキシードとなっているが、こうした習慣は大衆レベルでも浸透している。
だから昼はTシャツにショーツでも、夜になると襟のついたシャツにトラウザースを着る者も珍しくない(ただし全員がそうするわけではない)。
スペインのビーチ・リゾートも、たいていは大衆的な雰囲気だから、それほど多く の衣類を持っていく必要はない。Tシャツ半ダースにショーツが一着、それに布地の
シャツ二枚にコットン・トラウザース(チノーズ)が一着あれば十分だろう。
もちろんこれは、男性にも女性にも適用できるプランだ。なにしろヨーロッパは、何でもユニセックスだから。
これらの衣類はみな、「水洗いができる」「アイロンをかけなくてよい」という性 質を持っている。これは大事なことで、もしドライ・クリーニングとアイロンがけが
必要な衣類を持っていくと、やっかいなことになる。なぜならスペインはカジュアル 指向が強い国なので、そうしたサービスが高くつくからだ。
といっても、ジャケットを一着持っていると、なにかと便利なことはたしかだ。移 動中は内ポケットのある上着が、パスポートや航空券を入れるのに活躍する。
というのもリゾートに滞在しているあいだは、こうした貴重品を部屋の金庫に入れたり、または腹巻きに入れて持ち歩けばよいが(首から下げる貴重品袋やウエストポーチは、安全性という点から勧められない)、移動中はすぐに取りだせるところへ、しまっておかなければならないからだ。
もっともジャケットのかわにり、カメラマン用のヴェストでもよい。
滞在中の洗濯
水洗いができ、アイロンをかけなくてよい衣類を持っていけば、洗濯は簡単にでき る。
もしコンドミニアムの部屋に洗濯機が備えつけてあれば、それを使えばよい。コ ットンのシャツやトラウザースにも、アイロンをかける習慣のある人がいるかもしれ
ないが、ここはひとつ割り切って省略してしまおう。干すときに皺を伸ばしておけば 、すくなくとも通りを歩いても、差しつかえのない程度には仕上がる。
もし部屋に洗濯機がなければ、クリーニング店に持っていけばよい。スペインのク リーニング店は、たいてい水洗いも受け付けている。だから「洗濯屋(lavandería)」という看板をかかげている。
ただ洗って乾かす(lavar y secar)だけなら、500円から1000円程度ですむ。かなりの量(5キロくらい)まで同じ値段なので、なるべくたくさんまとめて出したほうがよい。
ドラム式洗濯機
最近になって日本でも「ドラム式洗濯機」が発売されたので、見たことのある人も 多いと思うが、それでもこのタイプの洗濯機は、僕らにとってまだ馴染みの薄い存在
といえるだろう。
「ドラム式洗濯機」はヨーロッパの洗濯機の主流で、スペインの洗濯機も、ほとんどすべてがこのタイプだ。
外観は、小型の冷蔵庫に似ている。ただ前面についているドアが、丸くて透明というところが違っている。
使い方は簡単で、ドアを開け衣類を入れ、ドアを閉めてタイマーをセットし、スタートボタンをおせばよい(洗剤はあらかじめ、上のほうについている小さな引き出しに入れておく)。
あとは全自動だから、機械が止まるのを待てばよい。なお、たいていの機種には、 動作終了後3分たたないと、ドアが開かない安全装置がついているので、止まった
からといって、すぐに開けようとしないこと。 |
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