| 南スペイン、地中海の町・マラガに暮らし始めて7年。平均月収10万円の"日雇い音楽屋"の私が持っているものといえば、安ピアノ、恋人、1羽のオウム、それだけ。本当にそれだけなんである。ビデオも電子レンジも冷房も車もない、おまけに明日の保証も、ない。
ホテルやレストラン、教会や劇場、プライベートパーティーなどでピアノを弾きながら、シェアしているマンション代が3万円。毎日お昼まではピアノの練習、午後はピアノ教室や編曲をして、夜は音楽屋。その間に営業をする。日本で会社員をしてた頃には気付かなかったけれど、定収入があるから社会からも信用され、カードやローンが組めるのだなぁ、うーむ(今じゃ信用も、人柄でかちとる身)。
ないないだらけのシンプルライフに加えて、マラガには日本食レストランも日本語も、日本の文化習慣もない。わび・さびはもちろん、家族も友達も日本においてきた。何にもないぞー、日曜日に開いているのは教会くらいだ、カラオケもコンビニもありません。
日雇いの音楽屋とマラガの間で、"ないないない暮らし"を余儀なくされているうちに、いつのまにか"ないないない"が気持ちよくなってきた。いや"ないないない"どころか、心と体はいつも『ガナ(やる気)』でいっぱい!これはいったい、どうしたことか。
見回してみれば、マラガの人たちはみんな『ガナ』で、顔がてかてか輝いている。失業率25%なんて思えないくらい陽気で、大声で、食べること踊ることが好きで、シエスタ(お昼寝)を大切にして。そう、マラゲーニョ(マラガ人)が生活のど真ん中にすえているのが、"人生は楽しむものだ、そのために私は生まれてきた!"という観念(疑いなく信じられるのもすごいが)。これが頭のてっぺんからズコンと打ち込まれている。
そして人生を楽しむために大切なのが、『ガナ』なんである。自分のガナ、情熱、したいこと、自分にとって大切なものを、大切にして生きる。この"地中海式バラ色人生道"を、この7年間で私はまさに"体得"したのだった。それも知らぬまに。
マラガの海と青空と太陽に感謝!
物理的、文化的、経済的には、ないないない!のマラガだけど、なんてったってマラガの宝物は、1年中、約束された青い海と太陽。私の借りているマンションのテラスの前にどどーんと広がっているのはなんと、あの地中海。
緑、水色、濃紺のグラデーションが毎朝、一番に目に映す光景だなんて、たとえ日雇い音楽屋暮らしだって、気分は億万長者。コスタ・デル・ソル(太陽海岸)の名のごとく、年間晴天日270日以上、ってことは、来る日も来る日も"晴れ"なんである。どんなに悲しいことがあっても、次の日、目が覚めると、どかーんと真っ青な空が広がっている。それがあんまり青すぎて紫がかってる。こんな青空を毎朝、一番に届けられたら、のんびり落ち込んでなんていられないのだ。
何度も、悲しみや怒りや不安から私を救ってくれたのは、マラガの海と青空と太陽だった。そして毎朝、私の心と体を笑いや光や情熱や色やエネルギーでいっぱいにしてくれるのも。日本では風邪ばかりひいていた私が、めったに寝込まなくなった。友人の3才になる息子さんのアトピーなど、一発で治ってしまった。
これぞ地中海健康法。次のバカンスはぜひマラガでどうぞ、心身ともにすっきりしますよ。顔をてかてかと輝かせて、日本の社会に戻っていくなんてのはいかが。ただし、あんまり長く居過ぎると、社会復帰できなくなりますのでご注意を。これは、また次回に。
ベソス(Besos)
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