| 国営大衆食堂
ペルーには政府が提供している大衆食堂がある。コメドール ポプラールと呼ばれ、連日大勢の人々で賑わう。定食が1ソルで食べられるとあって魅力を感じていたけれど、今まで行ったことがなかった。貧しい人びとが大勢集まっているとも聞いたので、外国人だと白い目で見られるのではないかと躊躇していたのだ。
食堂が開くのは午前11時、終了は全ての食事が完売するまで。運が良ければ午後3時頃までは食べられる。月曜日から金曜日の昼食限定だ。土曜日は貧しい子どもたちのために朝食サービスもあるという。
大行列ができるというこの食堂、まず入り口で食券を買う。私の前にはタイヤぞうりを履いた、まさに歩いて山から下りてきたような貧しそうなおじさんがいて、60セントしかないと小銭をかき集めて1ソルの食券(40セント足りない)を必死に買おうとしていた。私はここの常連という地元の学生と一緒に来ていたが、そんな状況を見るに見かねたその学生は、おじさんの分まで買ってあげた。
大衆食堂は大きな広場のようで、大きな金のテーブルが4列に5つくらい並べてあって、それぞれにイスが6つくらいついていた。脚が45度も曲がって立っているテーブルもあった。
12時半に着いた私たち。今日は運よく並ばないですんだ。クスコの昼食はたいてい午後2時からなので、まだ早くていい時間だったのかも。今日のメニューは海の魚(サバのような)の野菜煮と白いご飯にトマトベースの野菜スープと砂糖の入ったハーブ茶、そしてデザートは青りんご風のゼリーだった。
食券と交換に40×60cmの大きなお盆をもらう。お盆には2つの大きな丸い穴と3つの大きな四角のくぼみがついていて、そこに料理を入れるようになっている便利なもの。また、ここにあるのはスプーンだけ。ナイフやフォークやお皿があればみんな持っていってしまうからだろう。また喧嘩や盗みがないように(やはり貧しい人々には問題多き人たちも多い)、警備員もきちんとついている。いろいろ考えられている。
周りを見渡すと、いろいろな人がいた。道でタワシ売りをしている人がそのまま商品のタワシを抱えて食べていたり、子ども連れの家族で占領しているテーブルもある。常連なのか親しげに話しているおじさんおばさんもいる。けれどみな薄汚い感じの服を着ているのは、やはり1ソルでご飯を食べる人々だからなのだろうか。
壁には「衛生省プログラム、大衆食堂」と大きく書かれている。衛生省が責任を持って栄養バランスを考え、衛生面にも気を配って料理し、熱湯の食器洗い機を洗っている。きっと地元の怪しいレストランよりもずっと安全だろう。それに三分の一の値段で食べられる。
大きなお盆を二つ抱えて席についたおじさんがいた。
「ああやって二人分食べる人もいるんだ。それにタッパーを持ってくればお持ち帰りもできる。夕食も1ソルで済ませたいときは持って帰ればいい」
地元学生は生きるすべを教えてくれる。
この大衆食堂はフジモリ大統領のときにできたという。困っている人々を助けるいいアイディアだ。今の大統領は、あまりにもお金がかかるのでこの大衆食堂プログラムをなくそうとしている。この国は貧しいといわれているけれど、現大統領の給料は世界の大統領の中で第3位との噂。税金を貧しい人の食卓に使わずに大統領の給料にするとは何事じゃ。
この大衆食堂には一日700人もの人々が訪れる。この大衆食堂がみんなのために永遠に続きますように。
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Tomoko Suzuki
フォトジャーナリスト。南米ペルー在住。地域文化、環境問題を中心に取材している。著書に「アンデス、祭りめぐり」「アンデス奇祭紀行」(青弓社)。マチュピチュ遺跡やマヌー国立公園などの世界遺産の公認ガイドもつとめる。
すずきともこさんのホームページ「WELCOME
TO PERU―THE ANDES―」は、
http://suzukitomoko.oropendolaperu.org/
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