Vol.32
文・写真/すずきともこ

コイマって何?

 ペルーに来て初めて覚えた言葉がこれだった。その前からスペイン語は少し知っていたけれど、現地で暮らしてみるとこの言葉がかなり重要になってくるのに気が付いた。

 そう、コイマっていうのは賄賂(わいろ)なのだ。発展途上の地域で外国人として暮らしていると、地元の悪どいやつらは何かとお金目当てで私たち外国人に近寄ってくる。地元で重要な申請書類を作るとき、警察が関係する調査書を作ってもらうときなど、避けられないものを公的機関に頼むときなど毎回憂鬱になってしまう。

 もちろん書類作成は公務員がしなければいけない仕事なのだから、賄賂などいらないはずなのだけれど、彼らはわざと時間がかかるように仕向けてくれる。見るからに悪どい顔をしたやつなどは、なかなか作ってくれないばかりかあらを探してこれでは書類は作れないと言ってくる。

 もちろんほしいのはお金。緑のドル札だ。またラテンらしく底抜けに明るくコイマを要求する憎めないタイプのやつもいる。

 「ねえ、これだけ親切にやったんだから僕には○○はないの?」とニコニコ笑顔。いい年してまったくどうなっているのと人格を疑いたくなってしまうが、書類をスムーズに作ってもらうにはこちらも断れない。

 そんな汚い社会嫌だと思うときも大ありだけれど、使いようでは便利なときもあるのがこの社会。スピード違反で捕まりそうになったときに罰金を支払わず免れるのも、高く積まれている書類の一番下を一番上に持ってくるのもコイマ次第だろう。

 近年このコイマを受け取ったら、与えた人も受け取った人も多額の罰金を支払うという新しい法律の話を聞いたが、政治家以外に逮捕された話は聞いていない。一般的なコイマの流れは、川の流れのように永遠に続くのだろうか。