| アンデスバスの大道芸
ペルーの地元の安い長距離バスや、山や地方に向かうバスに乗ると、かならずといっていいほど、ドアが閉まる前に一人おまけの人が乗ってくる。
はじめてこれを見た人は「あれ、乗り遅れそうになったのかな」と思うだろう。安バスばかりに乗って地方に行く機会が多い私は「今回は何屋さんかな」と期待して見る。このおまけに飛び乗ってくる人の年齢はまちまち。10歳前後の幼い子どもだったり、学生だったり、年配のおじさんだったりする。今回のクスコ‐アヤクチョ行きのバスでは、18歳くらいの学生だった。
「乗客のみなさま。突然現れましたが、何も怪しい者ではありません。これから24時間続く長旅を楽しくしようと、ご挨拶に上がりました。さて皆さん、なぞなぞなんかいかかでしょうか。5つの質問、もし正解しなければ、50セントをボランディアでいいですからこの青年にあげてくださいまし。お礼にチョコレートを贈呈いたしましょう。それではまず第1問。女心はわかりません。ところで女性が2つの心をいだくのはどんなときでしょう」
なかなかラテン的なクイズです。女と心にせまる問題なんて、などと相手のペースにのせられて聞き入っていると、「そう、それは女性が妊娠しているときです」と青年は淡々と言ったり。
「さて第2問。三人の女性が町を歩いています。2つしか傘をもっていないのに、一人はまったく濡れません。さーてどうして」
青年は威勢良く商店街の八百屋さんのバナナの叩き売りのような口調で乗客に問いかける。「その日は晴れだったのです」(笑)といった具合で、バスの中は笑いの渦に包まれる。
5つのなぞなぞが終わると、待ってましたとばかりに、有無を言わせず最前列からチョコレートを乗客の膝の上にばらまきはじめる。
そして一言、「さていかがでしょう。チョコレートで活力をつけてから再挑戦してください。ご検討をお祈りいたします」と言って1ソル(50セントの2倍分)を回収していくのです。
今回はなぞなぞ青年。またあるときにはケーナを吹きながら民族民謡に踊る子ども。またあるときには、おじさんの人生についての説教、薬草や健康に冠する本の押し売りといった大道芸。そして決まってバス中に配られる数個の飴、ガム、チョコレート、クッ
キー。
欲しくもないのに膝元においていく。もちろん、回収時に返してもいいけれど、うっかり一つでも食べてしまったものなら全額支払わなければいけない。仕事がないなら、仕事をつくる。お金がないなら、小遣いかせぎに精を出す。こうしてアンデスでは、みんなたくましく生きているのである。
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