Vol.18
文・写真/すずきともこ

「フェリース クンプレ アーニョス!」

 フェリース クンプレ アーニョス!(お誕生日おめでとう)。私の誕生日は12月3日なので、今回は誕生日のお話です。

 スペイン語圏でも、国や地域によってお祝いの習慣は変わりますよね。私が中米コスタリカ(サラピキという田舎)に住んでいたときには、サポベルデの歌からはじまりました。

 スペイン語圏の国でも今では、スペイン語でなく、"ハピバールスディ トゥ ユウウ"というスペイン語なまりの英語で英語版の誕生日の歌を歌うことが多いのですが(きっと英語がかっこいいのだろう)、私の住んでいた村では"サポベールデ アー ティー(緑のガマガエルを君に)"と笑いながら歌うのでした。

 これは単に音が合うというだけで、深い意味はありません。やっぱり緑の多い自然保護の国、コスタリカらしいのかしら。そのあと年齢の数だけ生卵を頭で割るらしく、私は生卵をもってきた友達にさんざん追いかけられたのを覚えています。

 ところでペルー、クスコといえば"クンプレ アーニョス フェリース"のスペイン語版の誕生日の歌で祝います。子どもの誕生日のときは学校のお友達を家に招待して誕生日会をおこなったり、サロン(集会場)やホテルの小会場を借りたりして誕生日会を開くこともあります。

 ピニャータという大きな人形の形をした箱(お菓子やおもちゃが詰まっている)を天井から吊るして、それを棒で割るという行事もかかせません。箱が割れたときに天井からお菓子やおもちゃが落ちてきて、床の上では壮絶な戦いが繰り広げられるのです。

 それから、パイヤーソというピエロに来てもらい、会場のエンターテイメントをしてもらうのも習慣です。ピエロはゲームをしたりコントをして笑わせたりと、子どもたちの人気者です。私くらいの大人になるとそういった楽しい誕生日会はしませんが、友達たちと食事に行ったり、夜ディスコに踊りに行ったり、飲みに行ったり、誕生日が週末なら家族親戚みんなが集まり、中庭で大食事会(祝いことのときに食べる大ネズミの丸焼きを囲んで)。次の日の夜明けまで飲み会です。

 カセットの民族音楽やギター演奏で踊ったりもします。そして大人でも子どもの場合でも欠かせないのが、ケーキカット。誕生日の歌が終わった時点で主役が生クリームのたっぷりついたケーキを口でカプッと一口食べます。

 もちろん傍観者は黙っていません。ひとむかし前に流行ったコントのように、主役が口をつける瞬間、後ろから思い切り頭をケーキ目がけて押しつけたり、ケーキの方を下から持ち上げて主役の顔にベチャと押しつけたりたり。その両方だったりで、最後にはケーキも主役の顔も台無しです。その後は主役の顔でくずれたケーキを小さく切って招待客で食べるのが慣わしです。

 私も子どもの頃ケーキのコントを見て、一度はケーキを丸ごと口で食べてみたいなと思ったこともあったのですが、8年もそんな習慣の国にいると、「今年も目や鼻の穴に生クリームがつまっちゃう。嫌だなあ」と、毎年ケーキカットの瞬間、憂鬱になってしまうのです。