見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.79
兵役

A :

今回のお題は兵役。こういうテーマって日本人にはあまりピンと来ないよね。

B : 「さすがの私でもピンと来ません」って、泉ピン子さんも言ってたよ。
A : 下らないよ!日本で兵役がニュースになるのって、たいていはお隣の韓国の話だよね。芸能人やスポーツ選手が兵役にとられて。
B : 19歳以上の男子は義務らしいな。でも、ヨン様≠ヘ免除されたんだろ?
A :

ペ・ヨンジュンは視力に問題があったらしい。彼みたいに、身体検査や家庭の事情で免除される場合があるそうだ。

B : おかげで大ヒットしたよな、「不具のソナタ」。
A : 「冬のソナタ」だ!お前、ファンに殺されるぞ!ところで、スペインもつい最近まで兵役の義務があったんだよね。
B : つらかったよ。もう二度とゴメンだね、兵舎暮らしは…。
A :

お前は徴兵されてないだろ!外国人は対象にならないんだよ!

B :

でも、80年代はスペイン人の友達が結構徴兵にとられてたよな。

A :

そうそう。19歳から22歳までの男子は兵役の義務があった。でも負担は軽くなってたよね。期間は1年間だったのが9ヶ月に短縮されたり、週末は家に帰れたり。

B :

演習場でピクニックしたり。

A :

しねえよ、そんなこと!

B : 軍務につくかわりに社会奉仕をする人もいたな。
A : セルビシオ・ソシアル servicio social だね。さっきも言ったけど、身体検査とかで軍務に適さないとみなされた人は徴兵されなかったからね。
B :

俺の友達なんか、「お母さんが内務省の高官だから兵役しなくて済むんだ」って言ってたぞ。

A :

いわゆる徴兵逃れだね。政治家や役人のコネを利用して兵役を逃れた人は結構いたんだ。

B : その友達のお母さん、「うちの子は19歳の男子に見えますが、実は12歳の少女です」って、書類に書いてくれたらしい。
A :

ウソつけ!

B : 中には、「人間に見えるかもしれませんが、実は子犬です」って証明した政治家もいたって。
A : いるわけねえだろ!あと、「良心的兵役忌避」っていうのもあったね。宗教や思想信条によっては戦争への協力を拒否する人がいる。そんな人たちの考えが尊重されるようになった。80年代半ばごろだったね。
B : でも、なんで徴兵はなくなったのかな?
A : 90年代に入って冷戦時代が終わったのが大きいよ。それに兵役期間中は演習の事故で命を落とす人も少なからずいて、「もう徴兵の時代は終わった」って、反対運動の機運が高まっていった。2002年以降は職業軍人だけになった。
B : 徴兵のこと、ミリって呼んでたな。
A : そう。兵役はセルビシオ・ミリタル servicio militar とかミリシア milicia って言うんだけど、ミリシアを略したのがミリ mili。女性の定冠詞をつけてラ・ミリ la mili って言うね。
B : そんな名前の有名な漫画もあっただろ。
A : はいはい。「ラ・プータ・ミリ」 Historias de la Puta Mili だね。直訳すると「うんざりミリの物語」かな。『エル・フエベス』っていう今も人気の週刊コミック雑誌に連載されて。兵役生活のくだらなさ、つまらなさを痛烈に諷刺した。作者はイバー IVÁ。スペイン人なら知らない人はいない漫画だったね。
B : しかし、ミリって、なんか、かわいらしい響きだよな。
A : そう?
B : だって「ミリ」だぜ?キロとかトンとかメガとかテラなら「おお、でかい」って感じがするけど。
A : 「ミリ」は単位じゃねえよ!