見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.60
カトリック・ユダヤ教・イスラム教

A : スペインはカトリックの国。これは誰でも知ってるね。でも最近の調査によると、世界人口に占めるイスラム教徒の割合がカトリックを超えたんだって。
B : スペインにもイスラム教徒いるの?
A :

いるよ。少数派ではあるけど、モロッコ人とかのアラブ系もいるし、白人のスペイン人にもイスラム教を信仰している人がいる。バチカンの日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」が三月に発表したところによると、2006年のカトリック信者は世界人口の17.4%、それに対してイスラム教徒は19.2%で、史上初めてイスラム教徒がカトリック信者を上回ったんだって。

B : でも、キリスト教にはカトリック以外にもプロテスタントとか正教会とかあるだろ。
A : そうなんだよ。だからキリスト教徒全体だと33%で、イスラム教徒よりはるかに多い。でもイスラム教徒の割合は増えてるんだ。
B : どうしてかな?
A :

「オッセルバトーレ・ロマーノ」の編集長は、イスラム教徒の家庭では子どもが多いからだって分析してる。

B : オサマ・ビン・ラディンがスーパースターになったからじゃないの?
A : スーパースターって言い方するなよ!でも9・11以後、この人を抜きに21世紀を語れなくなったのはたしかだね。
B : 町歩いてても多いもんな、ビン・ラディンの顔プリントしたTシャツ来てる奴。
A :

見たことねえよ、そんな奴!

B :

でも、スペインはカトリックとイスラム教が長く共存した歴史があるよな。

A :

そうなんだよ。711年から1492年まで約八百年間、カトリックとイスラム教とユダヤ教が、まがりなりにも共存していた。

B : 共存たって、いがみ合ってたんだろうけどな。
A :

まあね。カトリックによるレコンキスタ(国土回復戦争)の時代だから、イスラム教徒を駆逐した歴史ではあるんだけど、でも、12世紀から13世紀頃にかけては三宗教を共存させようという動きがあったんだ。当時の大都市コルドバがそうだし、トレドでも翻訳家グループがギリシャやアラビアの著作をラテン語に翻訳した。

B : そう考えると、今のブッシュなんか、狂信的だよな。
A : ブッシュは福音派プロテスタントで、キリスト教右派、原理主義者なんだよね。原理主義っていうのはもともとキリスト教の中から生まれたもので、「イスラム原理主義」っていう言葉もキリスト教徒が言い始めたことなんだ。
B :

ブッシュが「ゴッド・ブレス・アメリカ」って言うのを聞くと、ぞっとするぜ。

A :

ゴッドと言えば、アメリカの1ドル紙幣には「我ら神を信ず」(IN GOD WE TRUST)って印刷されてるんだよね。ところが面白いことに、もともとキリスト教の「父なる神」とイスラム教の「アッラー」とユダヤ教の「エホバ」は、別々の名前みたいだけど、実は同じものを指しているんだ。エホバは「ありてある者」という意味、アッラーも「神」という普通名詞。一神教では神は一人だから名前が要らない。三つの神は同一人物なんだよ。

B : イスラムとキリスト教の原理主義者は同じ神をめぐって殺し合ってるのか。
A :

そういうことになるね。

B : いい加減、神も出てきて何とかしてほしいよな。
A : 無茶だろ。
B : 案外、人間のあまりの残酷さにビビッちゃって、出るに出られないのかもな。
A : どんな神だよ!
B : 出てきたら頭丸めて坊主になってたりして。
A : 一神教の神が出家してどうするんだよ!