見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.57
沈没船

A : 去年から今年にかけて、アメリカの沈没船探査会社が大西洋でスペインの沈没船を発見して、スペインとアメリカが揉めてるんだけど、知ってた?
B : 知らないけど、揉め事は良くないよ。スペイン人もアメリカ人も同じ人間なんだから仲良くした方がいいよ。
A :

何幼稚なこと言ってるんだよ。

B : ダライ・ラマと胡錦濤も、チベット問題でいろいろあるだろうけど、ここはひとつ、グッと堪えて、握手して仲直りした方がいいよ。
A : 全然関係ないだろ!で、沈没船だけど、発見したのはオデッセイ・マリン・エクスプロレーションというアメリカの専門会社。最初は去年の5月で、場所は太平洋のどこかってだけで詳細は明らかにしてない。船の名前も秘密で、コード・ネームが「ブラック・スワン(黒い白鳥)」。
B : コード・ネームって、お前はスパイか!
A :

まあ、ツッコみたくなる気持ちはわかるよ。

B : しかも黒い白鳥って、それ、黒鳥だろ?乗組員は全員ニューハーフだな。
A : ニューハーフって、新宿歌舞伎町のショーパブ「黒鳥の湖」だろ、それは!オデッセイ社は今年に入ってからもノース・キャロライナ沖でスペイン船籍と見られる沈没船を発見したんだ。コード・ネームは「ファイアフライ(蛍)」。
B : 船尾が光ってたんだろうな。
A :

言うと思ったよ!揉めてる原因は船の財宝だ。オデッセイ社はどっちもアメリカのものだと主張してるんだけど、スペイン政府は、「ブラック・スワン」は1804年にイギリス軍によって撃沈された貿易船ラ・メルセデスで、「ファイアフライ」は1750年にハリケーンに飲み込まれたエル・サルバドールだと主張してる。この船も新大陸、当時はインディアスって呼ばれてたけど、スペイン領中南米諸国との貿易を行っていたんだ。キューバのハバナを出航してスペインに戻る途中、ノース・キャロライナ沖でハリケーンに襲われて沈んだ。

B :

で、財宝はどんなものがあるんだよ?

A :

「ファイアフライ」で見つかったのは金の延べ棒が六本、銀が二本、エメラルド二つ、当時のレアル硬貨二枚。

B : なんだ、それっぽっちか…。
A :

ただし、もしこの船がエル・サルバドールだとしたら、24万メキシコ・ペソが見つかるはずなんだ。これは今の価値にすると、少なく見積もっても8300万ユーロに相当する。1ユーロ=155円として、約127億円。

B : 多いんだか少ないんだか、よくわからないな。
A : でも、去年の「ブラック・スワン」は約550億円の財宝があった。それを全部オデッセイ社が独占したんだ。スペインが文句言うのも無理はないと思うよ。
B :

結局、スペインもアメリカも金が目当てなのかよ。

A :

というより、歴史的価値なんじゃないの?

B : でも、今も世界の海にはスペインの船があちこちに沈んでるんだろうな。
A :

実際、あるんだろうね。

B : ジェームズ・キャメロンに頼めばすぐ見つかるんじゃないの?
A : キャメロンは『タイタニック』撮っただけだろ!
B : キャメロンなら実物大の船造って、史実に基づいてもう一度きちんと沈めてくれるよ。
A : 沈めたら意味ないだろ!