見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.53
ロシオ・フラード

A : 戦後日本の歌手を一人選べと言われたら、たぶん多くの人が美空ひばりを挙げると思うけど、今回は“スペインの美空ひばり”がテーマです。
B : 俺は笠置シヅ子派だけどな。
A :

別にいいよ、お前の趣味の話は。

B : いや、知らない人がいるといけないからさ。美空ひばりは笠置シヅ子の物真似が天才的に上手くて有名になったんだぞ。
A : そうなんだ。
B : プレスリーが腰振って女の子をキャーキャー言わせる前に、笠置シヅ子は腰ぐるんぐるん回してブギ歌ってたんだぞ。
A : へえ。
B : 美空ひばりもプレスリーも、所詮は笠置のパクリなんだよ!
A : プレスリーは関係ないだろ!もういいよ、お前の蘊蓄は!それより“スペインの美空ひばり”の話をしろよ。
B : ああ、ペレス・プラードな。
A : ロシオ・フラードだ!ペレス・プラードは男だし、マンボの王様だろ。しかもスペイン人でさえないよ。
B :

ロシオ・フラードは一昨年亡くなったよな。アルモドバルが追悼して「私たちはスペインの声を失ってしまった」って言ってた。

A : スペイン歌謡界の女王だったんだよね。レコードとか映画を知らない人も YouTube で動画が見られる。便利な世の中だね。
B : まあ当たり前だけど声がいいよな。張りがあって透明感があり、フレーズ一つひとつがドラマチックで、まったりとした中にも繊細な味わいがあり、舌の上でとろけるようにやわらかく、ほのかな甘さが鼻腔をくすぐり…。
A : 途中から食べ物の話になってるぞ!
B : とにかく、歌い出した途端に周りがパッと彼女の世界になるんだよな。
A : まさにそうだよね。豊かなブロンドの髪が美しくて映画スターとしても大活躍したし。ルックスがいかにもスターだった。
B :

フラメンコを歌えばいかにもフラメンコって味を出すし、センチメンタルな歌謡曲にも叙情性があってね。スペインだとコプラとかバラーダ(バラード)って言うけど。

A : 「20世紀最高の女性歌手」としてアメリカで表彰されたこともあるし、ホワイト・ハウスでレーガン大統領の前で歌ったこともあるらしいね。
B : こうなると美空ひばりどころじゃないな。ずっと上だろ。
A : 確かにね。面白いことに、美空ひばりは江利チエミ、雪村いずみと三人娘として売ってた時期があったけど、ロシオ・フラードもローラ・フローレスとイサベル・パントーハと三人一緒で語られることが多かった。
B : 今じゃもっと人数が増えて「モーニング娘。」って呼ばれてるらしいな。
A : 下らないよ!
B : 笠置シヅ子をパクッたのは美空ひばりだけど、他人の歌詞をパクッたのは安部なつみだよ。
A : もう忘れてやれよ!