見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.47
大晦日とブドウ

A : 年末が近づいてきたけど、スペインの恒例行事といえば大晦日に食べるブドウだね。
B : 12粒食べるんだよな。
A :

そう。鐘が12回鳴るのに合わせて一粒ずつ食べる。遅れないようにうまく食べるといい年になるって信じられてるんだよね。マドリードのプエルタ・デル・ソルの鐘が毎年テレビで生中継される。

B : 何の根拠もない迷信だけどな。
A : いきなり全否定かよ!いいだろ、験担ぎなんだから。
B : しかし、なんでブドウなのかな?
A : それがよく分からない。言い伝えによると1909年にアリカンテでブドウが当たり年だったのを農家が祝ったのが始まりらしいけど、何世紀も前からある風習だっていう説もあってね。ヘブライ人が来客と過ごした時間と同じ数だけのブドウをご馳走したのに由来するとか。
B : でもブドウでよかったな。もしドリアンだったらって考えると怖ろしいよね。みんな鼻つまんで、中にはゲエゲエ吐くやつもいたりして。
A : 気持ち悪いよ!
B : スイカだったらもっと悲惨だぜ。「わたし12個も食べられません!」って、女の子が泣きじゃくったりして。
A : 小さく切って食えよ!ていうか夏の果物だろ、スイカは!
B :

国民がみんな買ってくれるんだからブドウ農家にとっては嬉しい風習だよな。日本で言えばバレンタインのチョコみたいなもんだろ?

A : 全国のブドウ農家が儲かるわけじゃないんだ。大晦日に消費されるブドウの8割はアリカンテのビナロポー Vinalopó 産。6月から7月にかけて、一房ずつ袋をかぶせて品質と衛生管理をきちんとやってるんだ。袋の数はなんと2億5千万個。
B : 億千万、億千万の、胸騒ぎ〜♪
A : 郷ひろみの「2億4千万の瞳」かよ!
B : 一千万少ないな。
A : 比較することにどんな意味があるんだよ!
B :

足りない分は、きっと生まれ変わってから松田聖子とどうにかするんだろうね。

A : 何言ってるのか全然わかんねえよ!
B : とにかく、大晦日はブドウを食え、というわけだな。
A : ポルトガルでは干しブドウを食べるんだ。イタリアではレンズ豆を食べる。スペインの原産地呼称統制委員会によると、どっちもスペインから伝わったって言うんだけど、どうなのかね。
B : 正月に餅を喉に詰まらせて死ぬのも、もとはスペインだったのか…。
A : なわけねえだろ!