見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.33
テーブルサッカーとスペイン内戦

A : スペインでちょっと広いバールに行くと、片隅にサッカーゲームを見かけることがあるよね。
B : ああ、棒が何本も並んで人形がつながってるやつ?
A : そう。人形が並んで棒でつながっていて、台の横のハンドルを回すと人形が一斉に回転して、ボールを相手のゴールに入れるゲーム。テーブルサッカーって言うんだけど、スペインではフトボリン futbolín って呼んでいる。
B : 野球盤をでっかくしたサッカーバージョンって感じだよな。
A :

まあそうだね。で、これを発明した人がいてね。「私が発明者だ」と名乗っている人は世界に何人かいるんだけど、スペインで特許を取ったのはアレハンドロ・フィニステーレという人。この人がつい先日、2月9日に亡くなったんだ。

B : 惜しい人を亡くしました。
A : ウソつけ!ちっとも惜しいなんて思ってないだろ!
B : で、どこの馬の骨なんだよ?
A : 馬の骨って言うな!生まれはガリシア。詩人で編集者でジャーナリストとしても活躍した。テーブルサッカーを発明したのは17歳の時。スペイン内戦真っ只中の1936年11月。
B : 「俺の方が先だ」ってドクター中松が訴訟を起こしてるらしいね。
A : 起こしてねえよ!フィニステーレはマドリードでフランコ側の爆撃に遭って瓦礫の下に閉じ込められたんだ。カタルーニャの病院に搬送されて、目が覚めてみるとまわりは手足を切断された患者だらけだった。
B : 全部コンピューター・グラフィックスだけどね。
A : CGじゃなくて現実の話だよ!で、フィニステーレは考えた。「僕も昔はサッカーをやったもんだ。でも片足が不自由になってできなくなった。サッカーで遊ぶ人たちが羨ましかった。そういえば卓球も好きだったな。いっそのことサッカーも卓球みたいにテーブルで遊べたらいいのに」って。
B :

そうして生まれたのが任天堂のWii?

A : 人の話はちゃんと聞けよ!テーブルサッカーだって言ってるだろ!
B : 卓球、つまりテーブルテニスが発想の元だったわけか。
A : そうなんだよ。しかも内戦がきっかけだった。1937年初頭に特許を取ったんだ。
B : でも、どうせスペイン国内だけの話だろ?
A : でもないんだよ。後年グアテマラ政府から「我が国でもテーブルサッカーを作ってほしい」って要請状が届いたんだ。
B :

国際的に認められたわけだ。

A : グアテマラでは運悪くクーデターに巻き込まれて、パナマ行の飛行機に無理やり乗せられたんだけど、ハイジャック犯を装って無事釈放された。世界初のハイジャック犯の一人とも言われてるんだ。
B : ろくでもないやつだな。
A :

しかたがなかったんだよ!

B : 死んでよかったね。
A : いい加減にしろ!