見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.31
テルトゥリア

B : この間スペイン人と話をしてたら、「最近はテルトゥリアが少なくなった」って言ってたんだけど、何の話?
A : ああ、テルトゥリアね。一言でいえばカフェに集まって行う座談会かな。
B : なるほど。つまりマクドナルドに集合して幼稚園児を店内に走り回らせて、でもそんなことにはお構いなしに自分たちはおしゃべりに夢中なお母さんたちみたいなものか。
A : 全然ちがうよ!勝手に解釈して納得するなよ!テルトゥリアはただの世間話じゃなくて、時事問題や思想、哲学、芸術について議論を戦わせる場なんだ。場所もカフェと決まっていた。マドリードだと例えばカフェ・デ・ポンボとかカフェ・セントラル、カフェ・ヒホンなんかが有名。
B : そんな堅苦しい話じゃますます暴れるだろ、幼稚園児。
A :

だから幼稚園児なんか来ないんだよ!集まるのは思想家とか文学者とか芸術家とか、要するにインテリ、知識人だね。

B : インテリとか知識人って最近あんまり耳にしないよな。
A : それと関係があるかも知れないけど、スペインでテルトゥリアが盛んだったのは20世紀初頭、内戦が始まる前あたりまでだったんだ。「インテリ」とか「知識人」という言葉がまだ力を持っていた時代とも言えるね。人生の深いテーマについて論じ合った。
B : 「納豆を一日2パック食べると痩せられる」とかね。
A : それのどこが深いんだよ!ただのダイエット話だろ!しかも「発掘!あるある大事典U」でウソのデータだったのがバレて番組が打ち切りになっただろ。
B : でも時事問題だぜ?「今ならペコちゃん人形がオークションで高く売れる」とか。
A : 不二家かよ!経営再建中なんだから放っておいてやれよ!
B : 「そのまんま東の知事としての力量やいかに?」
A : なんでスペイン人が宮崎県の心配しなくちゃいけないんだよ!
B :

でも、そういう習慣がすたれるのはさびしいよな。

A : 確かにね。インターネットが普及して世界中の人といつでも議論できるようになったし、もう時代が変わってしまったとしか言いようがないね。でも大学生の中には昔ながらのテルトゥリアの伝統を守ってカフェで議論している人もいるらしいよ。
B : そういう人たちは「伝統を守るために」って、パソコンも未だにウィンドウズ3.1で頑張ってるらしいね。
A : なわけねえだろ!
B : インターネットは糸電話でやってるらしい。
A : できたらある意味すごいよ!
B :

ブロードバンドの人なんか、ものすごく太い糸使ってたりして。

A : かえって伝わりづらいだろ!
B : 「太いのに…」って、しょげちゃって。
A : いい加減にしろ!