見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.15
エミリオ君


A : 今回はスペイン語の保守性がテーマです。

B : 何だよ保守性って。意味わかんねえよ。いきなりややこしい言葉使うなよ。難しい話嫌いなんだよ!ていうか頭使いたくねえんだよ!楽しいことだけ考えて生きていたいんだよ!

A : 何ひとりで怒ってるんだよ!別に難しい話じゃなくて、スペイン語は外国語もどんどんスペイン語化する傾向があるっていう話だよ。たとえばエリザベス二世。

B : イギリスの?

A : もちろん。ところがスペイン人はエリザベス二世のことをイサベルって呼ぶんだ。

B : まるで別人だな。じゃあ、邪魔なときは「おい、邪魔だからどけよイサベル」って言うのか。

A : 言うわけねえだろ!女王だぞ。でチャールズ皇太子はカルロス。

B : それってスペイン人の名前だろ?

A : そこなんだよね。チャールズ Charles とカルロス Carlos はもともと同じ名前なのは確かなんだ。フランスだとシャルルだね。エリザベスも、フランスだとイザベル、スペインはイサベルになる。 ヨーロッパは同じ名前が国によって発音が変わる。
B : ピーターもそうかな?

A : そう。イギリスのピーター君はフランスのピエール君だし、スペインだとペドロ君だね。ロシアに行くとピョートル君。

B : で、何が言いたいんだよ?

A : エリザベス二世をスペイン人はエリザベスではなく「イサベル」と呼ぶ。新聞にも Isabel と書く。でも、たとえばフランスの新聞には Elizabeth と、正しい英語のつづりで書かれる。日本だって Elizabeth の発音どおり、エリザベスだろ?

B : つまりスペイン語は外国人の名前もスペイン風にしてしまうってことか。

A : そうなんだ。固有名詞さえ翻訳してしまう。これがスペイン語の特徴なんだよね。もうひとつ例をあげると、スヌーピーはスヌーピーで同じなんだけど、チャーリー・ブラウンはスペインではカルリートス Carlitos になっちゃう。

B : カルロスの愛称だな。

A : でも、「チャーリー」はもともと作者のチャールズ・ M・シュルツの愛称チャーリーから来ているわけだから、そのままチャーリーって呼べばよさそうだよね。もっとすごいのはウッドストック。

B : ああ、あの黄色い鳥な。

A : なぜかエミリオ Emilio っていうんだ。

B : その理屈でいけば、ルーシーはペネロペで、ライナスはアルベルトか…。

A : どういう理屈だよ!ルーシーはルーシー、ライナスはライナスで、なぜかそのまんまなんだ。ついでだけど、エミリオは俗語でメールも指す。 E-mail が Emilio に似ているからなんだけど。