見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.14
王室三十年


A : 去年のスペインはフランコ没後三十周年だったね。ということは王政復古も三十周年。フアン・カルロス一世が即位してスペインの民主化が進んだ。

B : それってどうなんだよ。民主主義っていうのは国民が主人公なわけだろ?王政とは反対じゃないの?

A : そこなんだよね。フランコ時代もその後も、フランス革命みたいに王室を滅ぼさなかった。立憲君主国の道をとったわけだ。 1975年以降は民主化がなかなか進まなかったんだけど、フアン・カルロス一世自らなんとかしようと、アドルフォ・スアレスを首相に任命して民主化を推進させた。国王は当時37歳。

B : じゃあ V6の森田剛と同い年だ。

A : 比較の対象にならないだろ!とにかく人格者として誰もが尊敬する人物なんだよね、フアン・カルロス一世って。国王に劣らず人望があついのがソフィア王妃。王室の人である以前に一個の人間として立派だという評価が高い。

B : どこかの国の王室とはえらい違いだな。

A : だよね。

B : どことは言わないけど。

A : うん。
B : …イギリスだけど。

A : 言うのかよ!ソフィア王妃はアテネ生まれのギリシャ人で年齡も同じ。フアン・カルロス一世が生まれたのは王室の亡命先のローマだった。

B : ローマ生まれの王子とアテネ生まれの皇女がスペインの王室のトップにいるっていうのが、いかにもヨーロッパ!って感じだな。

A : たしかにね。ヨーロッパの王室は戦争や政略結婚で国境をどんどんまたいできたからね。一説によると、ヨーロッパ各国の経済基盤は王室の結婚によるところが大きかったらしい。

B : そんなにあちこち移ったら、自分がどこの誰だかわからなくなりそうだけどな。

A : そんなことはないと思うけど。でも名前に家柄の歴史が刻まれていて、それがあんまり長くて驚かされる。ソフィア王妃の名前なんて、ソフィア・マルガリータ・ビクトリア・フェデリカ・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン=ソンダーボルグ=グリュックスブルク・デ・グレシア。

B : まるで寿限無だな。

A : ふだんは「ギリシャのソフィア」という意味のソフィア・デ・グレシアと呼ばれてるけどね。

B : 三十年の間にはいろいろあっただろうな。

A : 1981年2月23日の治安警備隊によるクーデター未遂事件が大きかっただろうね。フアン・カルロス一世がテレビで民主主義擁護の演説をした。去年の映画『カレンティート』がこの事件をテーマにしている。当時国王は43歳。

B : ダウンタウンの浜ちゃんと同い年だな。

A : だから較べる対象としてヘンだろ!