見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.13
みんなスペインのおかげです


A : スペインっていうと、ドイツやフランス、イギリスに較べてヨーロッパではちょっとマイナーな国っていうイメージがあると思うんだけど、歴史を調べるとマイナーどころか超メジャーだってことがわかる。

B : 大航海時代とか黄金世紀とかの話かよ?

A : それは16世紀から17世紀にかけてだよね。それよりもっと昔、12世紀に大翻訳時代っていうのがあったんだ。

B : ハリー・ポッターの初版がたしかその頃だったな…。

A : ツッコむ気にもなれないからさっさと話を進めるけど、その中心地だったのが…。

B : ツッコんでくれよ!

A : だったらもっとボケに工夫しろよ!

B : わかった。こうなったら死ぬ気でボケる。

A : いいよ別にそんなに意気込まなくて。で、中心地だけど、トレドだった。
B : 昔は都だったらしいな。

A : もとは西ゴート族の都で、その後も、フェリペ二世が首都をマドリードに定める前はトレドが首都だったんだよね。でも重要なのはさっきも言ったけど 12世紀なんだ。イスラム教徒とキリスト教徒とユダヤ教徒の学者が集まって、西ヨーロッパを代表する学問都市になった。

B : 当時もやっぱりいたんだろうな、セクハラで逮捕される学者。

A : 知らないよ!だいたい概念がないだろ、セクハラの!で、トレドに集まった学者たちはアラビア語の文献をラテン語に翻訳したんだ。当時のアラビア文化は世界でいちばん進んでいて、アリストテレスの哲学とかプトレマイオスの天文学とかユークリッドの数学を学んでいた。それをトレドのユダヤ人たちが中心になってカスティーリャ語やカタルーニャ語に訳し、キリスト教徒がそれをさらにラテン語に訳した。

B : なんでわざわざラテン語にするんだよ?

A : その頃は学問の標準語というか共通語がラテン語だったんだ。ヨーロッパ各地の大学も講義はラテン語だった。

B : 留学とかもしてたのか。

A : もちろん。有名な学者はいろんな国の大学で講義をした。ラテン語が共通語だから可能だったんだね。

B : オレは金ないから駅前留学にしとくよ。

A : お前の話なんかどうでもいいんだよ!で、トレドにいた大勢の学者や翻訳家のことを「トレド翻訳学派」って呼ぶんだ。

B : オレはどっちかっていうと「はぐれ刑事純情派」だけどな。

A : 「派」しか合ってねえだろ!そんなわけで、彼らがいたから現代の医学や数学や哲学が世界中に広まった、僕たちが今こうして生きているのも彼らのおかげと言っていい。

B : トレドには感謝しなくちゃな。

A : 別に今感謝したって意味ないけど。

B : トレドには感謝しなくちゃな。

A : ウソつけ!