見てきたようなウソをつき por 微笑問題
ars gratis ars
   古屋雄一郎
Vol.12
ザビエル来日五百周年


A : 今年のスペイン関係の話題といえば、なんといってもザビエルだね。来日して五百年目の記念の年。

B : 凄かったよな、武道館の初来日ライブ。前座がザ・ドリフターズで。

A : バカバカしすぎてツッコむ気にもなれないよ!前座がザ・ドリフターズって、それはビートルズだろ!時代からなにからメチャクチャだよ。ザビエルはナバラ王国の生まれでバスクの血を引く名家の出。“ザビエル”っていうのは生まれた町の名前で、つづりは Xavier。当時はシャビエルと発音していたはずなんだよね。

B : ザビエルといえば種子島に鉄砲伝来だよな。まるで軍人だな。

A : ある意味軍人なんだ。というのも、ザビエルが所属していたイエズス会、これが軍隊そっくりの組織でね。創始者のイグナティウス・デ・ロヨラはもともと軍人だったし。

B : ロヨラって、あんまり聞かない名前だな。

A : これはバスクのギプスコアにある城の名前。ロヨラはフランスとの戦争に従軍して負傷したとき、神の光を見た。

B : ドゥー・ユー・シー・ザ・ライト!ドゥー・ユー・シー・ザ・ライト!

A : それは『ブルース・ブラザーズ』のジェームズ・ブラウンとジョン・ベルーシだろ!って、ツッコんでも果たして読者がついて来れるか心配だよ!

B : で、どういうところが軍隊なんだよ?

A : ロヨラが書いた『心霊修行』っていう本があるんだけど、一日のうち何時から何時までどんな瞑想をするか、細かく書いてある。瞑想はまず視覚を研ぎ澄ませて天国や地獄の様子を見て、次に音を聞くという具合に、五感を使う順序まで厳しく規定しているんだ。今でいうマニュアルだね。

B : まるで宗教だな…。

A : 宗教だよ!なんの話してると思ってるんだよ?イエズス会がどれほど軍隊に似ているかは映画『ミッション』を観るとよくわかる。二十年前の映画で主演はロバート・デ・ニーロとジェレミー・アイアンズ。ロバート・デ・ニーロは奴隷商人、ジェレミー・アイアンズはイエズス会の神父で、イグアスの滝まで踏み入って布教するんだけど、巨大な大砲をうんうん言いながらジャングルの奥地まで運び込む様子はまさに軍隊。

B : そこに現れるのが、ちょっとドジだけど憎めない原住民役のウィル・スミスだっけ?

A : そんな役はないしウィル・スミスも出てないよ!軍隊としてのイエズス会の怖さについてはジョージ・オーウェルが有名なフレーズを『カタロニア讚歌』で紹介している。「夜とイエズス会は必ず戻って来る」っていうんだけど。

B : あと、NHKの集金。

A : 関係ないだろ!

B : でも引っ越すと必ず来るよ?

A : どうせ言うなら「死と税金」とか言えよ!

B : しかしザビエルもよくはるばる日本まで来たよな。

A : パリで勉強してロヨラに会って、まずインドで布教してマラッカで日本人に出会って鹿児島から南日本を回ったんだからね。

B : 「地球の歩き方」が何冊も必要だね。

A : そんなものないに決まってるだろ!