筆者近影


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昨年末、日本フラメンコ協会の主催するイベント「アニフェリア2005」に出演した。

出番は2つ。ひとつは、今、僕が唯一レギュラーで教室伴奏をしている川島桂子さんのカンテ教室有志達による「ビジャンシーコ」。そしてもうひとつが「セニョーラ・アルハンブラ」の独奏。曲はこちらも「ビジャンシーコ」。

「セニョーラ・アルハンブラ」とは、僕が作った楽器の名前である。

そもそもこのアイデアは、僕がこよなく愛する「睡眠中」に生まれた夢の産物なのである。不思議なことに、その夢は何回も何回も繰り返し現れたのだ。

ムニャムニャムニャ………

僕は峠道をオートバイで走っている。山の緑、空の青、白く浮かんだ雲雲雲。延々と続く道路の曲線を、オートバイは「トコトコ」と軽快な音を発しながら、右へ左へと傾いてはカーブを抜けてゆく。「気持ちいい〜!」ヘルメットのなかで叫びながら笑いが止まらない。

ふと気が付くと、僕はギターを手にしている。あれ?しかもエレキギターである。そしてネックを握りしめ、ピックを持った右手でブリッジをミュートしながら「ドッド、ドッド、ドッド、ドッド」と8ビートを刻んでいる。その音の大きいこと!背中にマーシャルの3段積みがくくりつけてあるのかと思うほどの爆音である。

左手で6弦を「ブ〜ン!」とスライドさせると、エンジンも「ブ〜ン!」と吹けあがる。なんと音程がアクセル代わりになっている!タコメーターもその度にギュンギュン振れてる。「チュイーン!」とピックスクラッチで弦を擦れば急に車体をスリップさせて、地面とこすれたマフラーから火花が飛んでゆく!「ギュヨ〜ン!」とアームで音程をダウンすれば、おっとっと、危ない危ない!これはブレーキだったのか。ふむふむ、なかなか良くできておるわい。と感心しつつ、ふとあることに気が付く。

「あれ?ハンドルはどうやって持ってるんだろう?」

と、ここで毎回目が覚めてしまうのである。う〜む。そのハンドルと自分の手の関係を確認しようとしたところで、毎回毎回目覚めてしまうのだ。さすがに何度も同じ場面に立ち会うので(ここが睡眠中の思考の不思議なところだが)その後、その場面が近づくと「今度は絶対確認してやるぞ!」と視線をゆっくりと落としたりしてる。しかし「今だ!」というその瞬間になると、戦闘機から脱出したパイロットのごとく「あっ!」と言う間にその夢から放り出されてしまうのである。

とにかく奇妙な夢であった。面白いのだけど、なんだかスッキリしない。それにあれだけ何度も同じ夢を見ると、これは天啓ではないかとさえ思えた。

「演奏すること」が「運転すること」になる不思議なオートバイ。

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その夢から幾年月。

突然それを作りたくなった。といっても夢の実現は難しい。抽象的な夢の出来事を現実の形にするのは不可能に近い。自分の見た夢の観察が全然不足している。まして今ではもう見ることのない夢である。唯一というか、ハッキリ覚えているのが上記の映像体験である。僕なりにこの夢の魅力を整理する必要があった。そして、自分の出来る範囲でこれを具現化しようと決めた。

昔、そば屋とか豆腐屋の業務用自転車の前輪に付いていた、スポークを使って鳴らすベル、「キン!キン!キン!キン!」という凄い早さで連続音を出すベルを皆さん知っていますか?あのアイデアを使って「自転車を運転しながら自由に演奏できる楽器を作ろう!」と考えた。音程の異なるベルを鳴らせる自転車。あの連続音はギターのトレモロだ。トレモロといえば「アルハンブラの思い出」だ。よし、音域は「アルハンブラの思い出」のメロディーが弾ける幅にしよう!彼女の名前は「セニョーラ・アルハンブラ」!

2000年冬から週6日鋼材屋で働き始めた。会社の倉庫の一部を借りて、昼休みと退社後の時間でコツコツ試行錯誤を続けた。社長がとても理解のある方で、工場の機械や工具、半端な鋼材を自由に使わせてくれた。

実はこの私、金属の加工に関してはまったくの素人である。知識も経験も全くなし。だから機会を見つけては職場で知り合った職人さんやお得意先の客、通いの業者に毎日相談しまくった。皆面白がって色々とアドバイスしてくれたけど、皆プロだから作ってはくれない。面倒なことを知っているから。結局、試行錯誤しながら一本一本曲げたり、穴空けたり、磨いたり、とにかく全部手作業で少しずつ進めるしかない。

それから約2年、あと少しで完成というある日、トラックで鋼材を配達中の僕に向かって、荷台に積んであった5.5メートルのL字鋼の山が崩れ落ちた。幸い身体はかわせたが足の甲に落ちてしまった。冷やせど冷やせど膨らむ足。安全靴は役に立たず骨折。翌週会社を辞めることになってしまった。

しかし、その事故にめげる事もなく続いた自宅での細かい調整や仕上げ、深夜の練習と語り出したら終わりのない制作話であるが、「楽器として演奏ができる」とふんだ僕は彼女の完成記念発表会を開催した。場所はタブラオフラメンコの老舗、東京高円寺「カサ・デ・エスペランサ」。2002年6月4日、サッカーワールドカップの日本対ベルギー戦で日本中が大騒ぎしていた夜である。それにもかかわらず沢山の人が集まってくれた。なかには自分の踊りの教室を休みにして生徒さん達と来てくれた先生もいた。その時が初対面であったが、さすが森田志保さんである。その夜の演奏は、今から思えばさすがにまだ拙い感はあったが、それでも2年越しの苦労が日の目を見たような気がして、とにかく嬉しかった。

実はこの楽器、未だに未完成なのである。というのも楽器の細かい修正や変更、そして新しい改良のアイデアが次から次へと現れてくるので、常に現在変更形の姿でしかありえないのだ。でも最終目的地を決めずに常に走り続ける「セニョーラ・アルハンブラ」も素敵かな、とも思う。

今回の「アニフェリア2005」では、オープニングに巨大な緞帳(どんちょう)の前で演奏させていただいた。フラメンコ好きの集まる大きな会場で、チリン、チリン、とささやかながらも美しい音を出せたことを「彼女」は「『セニョーラ・アルハンブラ』冥利に尽きる!」と僕以上に喜んでいることを確信しています。彼女共々、関係者の皆様の御協力に改めて感謝します。ありがとうございました!

「チリン!チリン!」


あけましておめでとうございます。今年も刺激的な一年にしたいですね。

最近は都内各地のBARでギターソロを弾いています。演奏チャージ無料のお店での日程をいくつかご紹介します。

その1:
会場:「SOTOKOTO LOHAS KITCHEN & BAR」
住所:東京都千代田区丸の内2-4-1-B1F(JR東京駅前、新丸ビル地下一階)
電話:03-3216-1400
日時:1月31日(火)
演奏開始時間:PM8:00、PM9:30
料金:飲食代

その2:
会場:「QEQUE BAR(ケクー・バー)」
住所:東京都杉並区阿佐谷南2-19-11(JR阿佐ヶ谷駅南口・一番街)
電話:03-3315-5772
日時:2月11日(土)
演奏開始時間:PM10:00、PM12:00
料金:飲食代