取材・文 浅野ひろ子
 
 

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フラメンコギターデュオ池川兄弟
  兄:トシ池川さん (右)
  弟:ヒロ池川さん (左)

幼い頃からフラメンコギターを習い始め、兄弟で演奏活動をしている異色のフラメンコギターデュオ“池川兄弟”。様々な形でフラメンコへのアプローチを試みながらも、現在はフラメンコの真髄を知るために本場セビージャへ留学中のお二人に訊いてみた。

 

フラメンコ,ただいま修行中


フラメンコギターを始めた時期と、きっかけは?

兄トシ 僕が6歳、弟が5歳の時に、ラテン歌手である父の影響で始めました。

弟ヒロ
 僕たちの父親はラテン歌手・ジュン池内の名で赤坂にある『寺子屋』というお店を経営しています。そこでは色々なアーティスト(クラシック、ジャズ演歌歌手やジャズダンサーなど)が出演していまして、フラメンコギタリスト・高橋秀男氏(僕達の中ではギターのおじちゃん♪)に小学1年生の頃からフラメンコ及びクラシックギターの曲を習っていました。ギターのおじちゃんには僕たちが幼かったので、フラメンコの難しいリズムとかではなく、まず『ギターは楽しいんだ!』という根本的なものを教わりました。

長いことフラメンコギターを弾く中で、何か悩んだことはありますか?

兄トシ ここ(セビージャ)へ来てからです。ここは日本のフラメンコとはあまりに違いました。来た当時は本当に何も出来なくて、悩みっぱなしでした。でもいろいろな人に助けられ、また自分もこのままじゃいけないと思うようになってから、一つ一つクリアになってきました。週末は旅行、語学勉強などをしているうちに気持ちにも余裕が出てきました。

弟ヒロ 僕の悩んだ内容はフラメンコをやってる人は『大人』だということ。何で僕たちは小学生の頃からやってるんだろう?それが理解出来なかったです。そのためフラメンコギターを親にやらされてる!つまらない!と思ってしまいました。中学校に入ってからは友達が聞いてる音楽に興味が沸き、同じギターでもエレキギターにハマり、フラメンコギターを次第に弾かなくなりました…。

一時期、フラメンコ以外の音楽を中心に演奏・練習されていたのはなぜですか?

兄トシ 他に誰も演奏していないので、なんとなくやめてしまって…。友達からも「マニアックな民族音楽」と思われていたので、僕もそう思い込んでいました。若かったです(笑)。そのため当時は、フラメンコよりジャズやクラシックの方に興味がありました。

弟ヒロ 僕は自分から行動しないとやる気が起きないタイプなので『これだ!』と思った瞬間、誰にも負けたくないという気持ちが強くなり、その時思ったのがエレキギターだったんです。そのため中学・高校時代は友達とバンドを組んで、エレキギターを演奏していました。ですからその時は、フラメンコに対する思いは正直、全く無かったと言えます。今もフラメンコギターをピックで弾くことがあるのですが、これはその時の影響です。

いつ頃、どうして再びフラメンコギターを中心に演奏されるようになりましたか?

兄トシ 大学在学中に気のあった仲間と一緒にバンドを組み、路上演奏を中心に活動したのがきっかけでした。当時はアコースティックギターの弾き語りが多い中で、フラメンコギターを演奏すると皆が興味を持ってくれて…。意外にもフラメンコを知らない人が多いんだということも知りました。その後、全国学生フラメンコ連盟『FLESPON』と出会いました。

弟ヒロ 2年前に兄ちゃんがインタ−ネットで『FLESPON』を発見して一緒に遊びに行こう!と言われ、くっついて行ったのが当時の会長がいる大学でした。そこで教えている先生や生徒のみんなが凄く楽しくフラメンコしているのに惹かれ、尚且つここで初めてフラメンコの基礎ともいえる『12拍子』を教わり唖然…。人生2度目の『これだ!』です。フラメンコって奥が深い!と痛感しました。そして東権正男氏にギターのテクニックやフラメンコの知識、伊藤日出夫氏に表現方法やプロとしての在り方、色々な哲学を学びました。

ヴァイオリニスト・依田さんと、一緒に活動するようになった始まりを教えて下さい。彼女との活動で、学んだことは何ですか?

兄トシ 依田さんとは、ゲストとして『寺子屋』にて出会いました。

弟ヒロ そこで依田さんがCDをバックに弾いていたので、父親が『生演奏の方が良いに決まってるし、せっかくだから一緒に弾かせてもらって勉強させてもらいなさい。』と言われ『スペイン』という曲を即興で弾いたのが活動の始まりです。

兄トシ それからというもの依田さんとは沢山のお仕事を一緒にさせて頂くにつれて、音楽的知識や感性を学び、また、違うジャンルとの関わりによってフラメンコへの別のアプローチの仕方や在り方を教わったように感じます。

依田さんのアルバムに共演され、初めて経験したCDレコーディングの感想は?

兄トシ とても緊張しました(笑)

弟ヒロ 同じく(笑)

兄トシ 『自分の音はこういう具合に聞こえてるんだよ!』というのをまざまざと見せ付けられて、演奏者との呼吸やこのCDを聞いて下さってる人の事を考えて弾かなければ!というのを学んだ気がしました。


スペイン留学の理由は何ですか?

兄トシ より本物を求めようと思ったからです。僕たち池川兄弟の活動コンセプトに “一人でも多くの人々にフラメンコギターを知ってもらいたい”というのがあるのですが、そのためにはまず、本物を知るべきだと思いました。

弟ヒロ 僕は単純に本場のフラメンコが見たいのと、スペインの空気を肌で感じたかったからです。ありがたいことに演奏依頼の話などをいただき、定期的に活動をしていたのですが、 やはりスペイン留学していない自分に不安を感じ、兄と話し合い留学を決めました。

スペインでのレッスンスケジュールを教えて下さい。

兄トシ 今は1日を語学勉強とギター練習を半々ぐらいの割合で過ごしています。フラメンコを理解するのに語学は必要不可欠と感じたからです。後はフラメンコ鑑賞。セビージャは毎日のようにどこかでフラメンコが見られるので非常にいい環境です。

弟ヒロ 僕は語学学校に入ってスペイン語を身に付け、現地の人とコミュニケーションを取れるようになりたいです。そしてその合間にギターのレッスンを受けようと思っています。

フラメンコ,ただいま修行中

スペインに来てから感じたこと、学んだことは何ですか?

兄トシ 今は毎日が新鮮で学ぶことだらけです(笑)。フラメンコには他のジャンルにない独特のリズム感覚、メロディーラインがあり、その一つ一つに「生」を感じます。この魅力は一度ハマったら抜け出せませんね(笑)。でも、それゆえ難しい。一生かけて勉強していくつもりです。

兄弟で演奏活動をすることについて、どう思いますか?同じフラメンコギタリストとしてお互いにどう感じていますか?

兄トシ 周りの人達や友達にもよく言われるのは、『吉田兄弟のパクリだぁ!』です(笑)。言われるのは百も承知で組みました。むしろ、覚えやすくて逆に良いのではないかとも思います。

弟ヒロ 兄弟には一緒に育って、遊んだり、喧嘩したり、一緒に弾いたりしていた時間があるので、兄弟ならではの『呼吸』というのがあるんです。みなさんの親や兄弟の事を考えていただければ分かりやすいのではないでしょうか?組むことに関しては全然問題は無いし、むしろお互いを分かっているのでやりやすいと思いました。

兄トシ それに弟と僕は性格もギターの弾く癖もかなり違うし、お互いの足りないところを全部持っているので、タイプが違うギタリストだからお得なんですよ(笑)

これからの予定は?また、将来の夢や希望を教えて下さい。

兄トシ 夢は一人でも多くの人にフラメンコを知ってもらいたいということです。そのために今はひたすら修行の日々!…っと言っても十分楽しんでいますが(笑)

弟ヒロ まずはスペインで色々学ぶことです。ギターもそうですが、人との繋がり、異国の地での自分の存在、それらを十二分に確認出来る場だと思います。そして、自分がどういう風にフラメンコを通して回りの人達に自分の思いを伝えていくのかを考えたいです。そして兄ともども、どんな形でも良いのでフラメンコを色んな方達に知って貰いたいですね。

兄トシ 帰国したら兄弟でライブ活動を再開したいと思います。

●好きなアーティスト
兄トシ
「パコ・デ・ルシア、ジュン池内」
弟ヒロ
「チクエロ、HIDE」

●貴方にとってフラメンコギターとは?
兄トシ
「わがままな彼女」
弟ヒロ
「『夢限』夢を想う限り続く、という意味で創りました。」

●愛用のギター
兄トシ
「Conde Hermanos」
弟ヒロ
「J.マリンプラスエロ」

フラメンコ、ただいま修行中
お二人のセビージャ留学の様子は、
池川兄弟のHPでご覧いただけます。