File2 Aさん
「フラメンコを勉強する!」という意欲に燃えてスペインにやってくる人もいれば、今回ご紹介するAさんのように、日本でのフラメンコも仕事も中断し、フラリとやってくる人もいる。いま、彼女にはフラメンコへの思いが再燃しているようです。
※ご本人の強い希望により名前、写真等の掲載は控えさせていただきます。ご了承ください。


 オレ!グラナダのフラメンカ

 フラメンコをはじめたきっかけは、何か新しいお稽古事をしようと思ったから。短大卒業の前に、残り少ない東京での学生生活を楽しもうと思ってね。そんな軽い気持ちで始めたんだけど、すっかりハマっちゃって。卒業したら出身地である名古屋に戻ろうと考えていたんだけど、フラメンコのために東京に残ることにしたの。

 何も知らないところから習い始めて、4年経った頃からかな、だんだんステージにあげてもらえるようになったの。最初はパルマでね。そうして少しずつ、現場を目にする機会が増えていった。そういう意味では、とても恵まれた環境にあったと思う。日本の先生にはとても感謝しているの。たくさんのステージを通して、プロとして踊ることがどういうことか分かったわ。

 その後、だんだんと私の生活の中におけるフラメンコの比重が大きくなっていって、ついにはその重さに耐えきれなくなってしまったの。疲れちゃってね、フラメンコとそれをとりまく環境に。それでフラメンコをやめちゃった。

 それから1年ぐらい経ってから、仕事も辞めた。いろんなことがあって、精神的にまいってしまった。疲れきった私が下した決断が、スペイン行きだったのよ。そして日本から逃げるようにしてここへ来たの。マドリッドへも行ったんだけど、私にはあまり合わないような気がして、結局グラナダにたどり着いたの。

「グラナダのフラメンコ」が好きだから

 グラナダに来て最初のうちはフラメンコはやっていなかった。そういう元気がなかったのよ。半年ぐらい語学学校に通っていた。あの頃は本当にたくさん勉強したわ。そうやってグラナダで生活していくうちに、徐々に元気を取り戻してきてね。それでまた踊ってみようかな、という気持ちが湧いてきたの。今は完全に踊り中心の生活。

 それでも、マドリッドやセビージャにいるフラメンコ友達のことを考えるとあせるのよ。みんな相当練習しているみたいだから。名の知れた先生もたくさんいるしね。でも、私はグラナダから動く気にはなれないの。1年半ちかくいると、ここに生活が出来上がっちゃうの。友達もたくさんいるし。物価も安いし、タパスもただで出てくる!(笑)

 確かに、グラナダには有名な先生は少ない。でも、私はグラナダのフラメンコが大好きなのよ。ここには、無名かもしれないけれど素晴らしい先生がいるわ。フラメンコにとって、とても大切なことを教えてくれる先生がね。そういう人たちからいろいろなことを学んで、それを日本にもって帰りたい。フラメンコってね、テクニックがなくても踊れるのよ。大切なのは感じること!

 とても上手に、きれいに踊る日本人はたくさんいる。本当に美しい!でもね、私にはそういう踊りは向いてないって自分で分かっているんだ。私には私の踊りがあるはず。グラナダで学んでいるからこそできる踊りをしたいの。

いま、ここでできることを精一杯やりたい

 今、自分らしく踊ることを勉強中。ずっと長いことついている先生がいるんだけど、彼女はとてもていねいに教えてくれるいい先生で、私は彼女の踊りも彼女自身も大好きだから、ついつい彼女に似てきてしまうのね。でも、それは違うと思うのよ。真似て踊っても仕方がないじゃない。だから最近はあまり彼女の動きを見ないようにしているの。自分の中から出てくる動きを大切にしようと思っているわ。

 フラメンコを学ぼうと思ってスペインに来る人は、そのほとんどがセビージャかマドリッド、もしくはヘレスへ行くでしょ。だからね、私は、グラナダでもこんなに学べるんだっていう"あかし"になろうと思っているの。そのためにはもっともっと勉強しなくちゃね。そしていつの日か、日本でプロとして舞台に立ちたいな。それが一番の目標!自分の教室も持ちたいわ。そこで、自由な雰囲気の中、フラメンコを教えたい。堅苦しい「お教室制度」はなくて、スペインのようにオープンな教室ね。先生と生徒の間の隔たりとか上下関係とか、そういう窮屈なものがない、開放的な教室がつくれたらいいな。

 ・・・と、頭に思い描く理想像はあるけれど、実際日本に帰ってからどうするのか、どうすればプロとして踊っていけるのか、具体的には何も分からない。だからこそ、今ここにいるんだと思う。なりたい自分を思い描いて、今はここでできることを精一杯やるのみです。