◆公演Re View
第三回大沼由紀舞踊公演
“Espontánea” 〜フラメンコ、自然発生的な〜

鈴木能律子写真
(C)大森有起
鈴木能律子写真
(C)大森有起
(C)大森有起
フラメンコ愛好家 沖秀夫・実枝子
(伊豆・アリスのレストラン オーナー夫妻)
フラメンコ舞踊家 山室弘美
フラメンコ舞踊家 上藪洋子
 

フラメンコ愛好家 沖秀夫・実枝子
(伊豆・アリスのレストラン オーナー夫妻)

由紀さんのリサイタルは、楽しみでもあり、罪悪感も感じてしまいます。僕らは客席で安穏と見てるだけ、この一回のステージに彼女が注ぎ込んだエネルギー、そして経済的な負担を考えると身が縮みます。“Espontanea V” もそうでした。3人のヘレサーノをたった一回の公演の為に呼びよせ、舞台作りも全て一人で行うという極限までのストレスの中で幕が開きました。その瞬間彼女が見せた化身、唄にギターに身を委ね、感じたままに創り、まさにEspontanea。型を踏襲するのではない創造的なフラメンコ。まだまだ見たい、もっと見たい!でも次のステージを造れ、というのは又苦しめ、ということなのでしょう。見たいけど心が痛い、痛いけど、見たい!

 

 

 

フラメンコ舞踊家 山室弘美

大沼由紀という踊り手は、良いカンテと出会えた時、水を得た魚のように彼女の呼吸が始まる。彼女の内にはカンテがある。唄を体内に轟かせ、彼女の身体を通してより具体化して表現される。無駄なものは一つも無い。彼女にとって“振り”とはあって無いようなものだ。フラメンコはこれが正しくてこれが間違いなんて無い。 だから惹かれるし苦しくもある。 その思いを唄、ギター、踊りとの攻めぎ合いの中に、その未知なるものを、真実を模索しているかのよう。そして観るものを一斉に彼女の世界に連れて行ってしまう。 大沼由紀という表現者がいてくれた事に安堵する。。。

 

 

 

 

フラメンコ舞踊家 上藪洋子

冒頭、ロルカの詞がレコード針の軋みと共に音の粒となって由紀さんの躰に降り注ぎ、その粒を時に飲み込み、時に噛み締め、時にもて遊ぶ様に由紀さんは躍っていた。
今時のフラメンコの公演は派手な演出だったり、凝った構成だったりと、確かに観ていて飽きないし、面白い。
だが、派手な物でなく、気を衒う訳ではない由紀さんの公演のシンプルさ、素朴さ。。。でも、そこに洗練された物も感じ、純粋なフラメンコの強さを知らされる。チラシから始まり、衣装、照明、演目、アーティストの選択。。。その全てに由紀さんのこだわりが見え、すごく贅沢な時間を過ごせました。
中盤、ロンデーニャを爪弾く俵さん越しに踊る由紀さん。独特の空気感と息を呑む様な俵さんのギターの音が由紀さんの躰を踊らせ、そこから抜け出た影は巨大な揺らめきになり、二人を覆うが如く自由に踊っていた。
この情景が今も心に焼き付いて離れません。



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