板坂 スイート・ベイジルでやったんだけど、ステージからは客席のみんなが横を向いて座っているように感じるし、逆に客席からはステージが低いから下半身が見にくいとか、苦情の 10 件や 20 件は出るかもしれないと思っていたよ。でも、来てくれた人は皆、大満足だったようで驚いたね。
田代 スイート・ベイジルはライブハウスとしてステータスもあるからね。同じフラメンコを見るにしても、場所はいつもとちょっと違う六本木だし、店に入った雰囲気もいつもと違うし、ちょっとこじゃれた料理が出るなど、確かに新鮮な気持ちにはなると思うな。
板坂 ところで、店で踊って改めて感じたんだけど、劇場と店で同じくらいの出来の踊りをしたとしたら、見る人のノリとしては店の方がはるかにいいよね。
田代 それはもう、如実に違うね。
板坂 それって何なんだろう、フラメンコというのはやっぱりそういうものなのかな。例えば他の音楽はお店でやったらダメという場合もあり、それぞれのアートにふさわしい場所があると思うんだけど、フラメンコというのは、やはり劇場には合ってないのかなとつくづく思ったよ。
田代 フラメンコの生い立ちを考えてみると、最初から劇場を意識してできたわけではないし、もともと劇場ではない場所でやることが多かったからね。それを劇場でやるためには、いろいろな部分をそぎ落とさなければならないし、研磨しなければならない。
板坂 私は研磨するというより、付け加えなければならないのだと思う。例えばロックの場合も、純粋なロックンローラーにとっての本来のロックというのは、皮ジャン着て、穴のあいたジーンズ穿いて、 100 人くらいの観客を相手に薄暗い地下室でやるもんだって言う奴もいるんだ。東京ドームでやるのは、あれはロックではなくて、エンターテインメントなんだとかね。でも、それを東京ドームに持って行く人たちというのは、それなりの仕掛けを作っている。だけど、フラメンコはお店から劇場に持って行った時もほとんど同じことをやっているように感じるんだ。
田代 踊りそのものも、全然変わらない場合が多いしね。 |