生徒一人ひとりの個性や能力に応える少人数制のクラス
指導においては「生徒が一人でソロを踊れるようになる」ことを最大の目標としているので、その第一歩という意味では、発表会やミニライブというのは生徒にとってはすごく貴重な機会だと思うんです。今回、初めての発表会となるのですが、二人での出演など、少人数で踊る場を数多く作っています。人前で踊ることで意識が変わりますし、私としては、フラメンコを始めてできるだけ早いうちから、そういう機会をどんどん与えていけるようにしています。
ゆくゆくは振付、構成を自分で考えて、流れを止めずに最後まで踊れるようになってほしい。私は、そうでないとフラメンコを踊れることにはならないと思うんです。ですから、ちゃんと踊りたい人は少しでも早く、多くのチャンスがめぐってくるように後押しする。それも私の役割だと心掛けています。
2005年に西武新宿線の新井薬師前で初めて自分のクラスを持ち、今は中野、高円寺、高田馬場で教えています。モットーは少人数制。生徒が増えても1クラス10人以上にはしたくないと思っているんです。
それは、人間の性格や能力というものは一人ひとり違っており、同じ人でもその日の体調によってもまた違ってくるので、「対個人」として、生徒一人ひとりと向き合って教えたいという考えによるものです。
生徒によっては、レッスンが難しくてついていけないとか、逆にもっと先に進みたいのに同じことをしなければならないとか、いろいろと悩みや不満も出てくると思うので、そういうことを回避する意味でも、エスカレーター式にクラスを進めることはしていません。中には、フラメンコを始めて半年でセビジャーナスを踊れるようになる生徒もいるわけですが、その場合は早々に次のクラスに移れるように、小分けにステップアップしていけるようにしています。
大きな影響を受けた森田志保さんとの出会い
私が今、こういうことを考えて教室を運営しているのも、森田志保さんの指導によるところが大きかったと思います。踊りの技術はもちろんですが、器が大きくて寛大で情の厚い志保先生の人柄が好きなんです。とにかく私に絶大な影響を与えてくれた人です。
私がフラメンコを始めたのは、友人が習っている教室に見学に行ったのがきっかけでした。始めの2年くらいは全然熱心ではなかったのですが、だんだんやる気が出てきてその教室では物足りなくなり、次に碇山奈奈先生に師事したんです。その時に代教をされていたのが志保先生。私が96年から97年にかけてのスペイン留学から帰国したときには、独立してスタジオトルニージョを開設されていました。
それ以来、2002年までクラスで教わりながら代教を務めさせていただき、04年からは生徒を卒業して代教のみ。そして、2005年から自分の教室を始めました。この時も、やはり志保先生にうまく背中を押してもらったおかげと思っています。
今回、合同で発表会を行う鯨岡裕美さんはトルニージョ時代の先輩になります。また吉田光一さんや池上源太朗さん、影山奈緒子さんら、当時は良き先輩や同僚に恵まれたと思います。
 |
| 吉祥寺で開催しているオープンクラスは、フラメンコ経験4年以上の方を対象にしたテクニカ(基礎)のクラスです。ブラッソと体の使い方、足の打ち方をもう一度基礎から見直してステップアップを目指します。基本的なマルカールをしっかりマスターしてから簡単なブレリア、タンゴを通してコンパス感も養っていきます。 |
少しずつ見えてきた目指す方向
フラメンコの根っこにこだわりたい
今はまだ、人にものを教える立場にある人間としてどうあるべきかなど、手探りな部分が多いですが、それでも、私なりのこだわりというか、やりたいこと、目指すことも少しずつ見えてきました。
先にお話した少人数制のクラスということもそうですし、あと今の段階では、私としてはフラメンコの根っこにこだわりたい、という思いが強いですね。新しいことを追求するのではなく、王道というべき、オーソドックスな部分を追求したいという。きちんとベースのものを理解していないと新しいことはできないと思いますし、このことは生徒にもきちんと伝えるようにしています。
私は踊りというのはきわめて個人的なものだと思うんです。自我が出るものだと。踊りは技術を披露するためではなく、自分の内面をさらけ出すものだと。技術は自分の内面を出すための最低限のものがあればいいのであって、技術的にうまくならなければ踊れるようにはならない、ということではないと考えています。
大切なのは、技術よりもその人の内面。このことも生徒にはよく話をしますし、私としても公演やライブで踊りを観るときも、その部分を見たいという気持ちが強いですね。また、自分が踊るときも常にそういう目で見られているんだ、ということを意識して踊るようにしています。
表面的な技術というのは、つきつめていけばキリがないですよね。スポーツのようになってしまって、何のために踊るかという本来の目的を見失ってしまいそうな気がするんです。私が目指すのはその方向ではない。このことは最近、特に強く意識します。
そして、踊るときに大切にしていることは、その曲の持つ背景や雰囲気を考えること。何を踊っても同じに見えてしまうのは良くないと思います。そのためにも、フラメンコそのものへの勉強は大切なことだと思うんです。
今フラメンコを学んでいる人たちには、まずフラメンコを音楽として好きになってほしい。私自身、フラメンコに興味を覚えたのは音楽的な要素が多分にあったと思います。ふだん見たり聞いたりする機会のない生徒にはCDやビデオを貸し出したりしているんですよ。あと、入門クラスでもパルマの叩き方の勉強をするなど、いろんな角度からフラメンコの楽しさを伝えたいと考えています。
発表会が終わると、クラス再編成となりますので、この機会にぜひ教室をのぞいてみてください。見学、体験レッスンも実施していますので、お問い合わせください。
|
<好きなアーティスト>踊りではアンヘリータ・バルガス、カルメン・レデスマ、ソラジャ・クラビホ。カンテはフェルナド・デ・ラ・モレーナ、エル・トルタ。ギターではモライート・チーコ。好きなヌメロは、踊ってしっくりくるのはソレア。聴いて楽しいのはアレグリアス。 |
取材・文 藤戸良彦
|