第50回

田中美穂さん(舞踊家)


  スタジオ開設25周年を迎える田中美穂さん。踊りに対する姿勢と人柄が多くの人に支持され、幅広い年齢層の生徒が学んでいるが、特にキャリア10年、20年以上という人たちが多いことに驚かされる。今回、田中美穂さんに学ぶ人たちの声を聞くことにより、多忙で時間の取れない「舞踊家、田中美穂」の魅力を浮き彫りにしてみたい。


田中美穂フラメンコスタジオ25周年記念公演は
1月16日(日)16:00から
新宿文化センター大ホールで開催
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小松慶子さん

美穂先生に教わったのは、「すごい先生がいるよ」という友人の紹介がきっかけでした。その時から13年。たしかにすごい。何がすごいって、それは、スペインと日本を何度も往復しながら、自らが30年間培った技術と心を私たちに教えてくれるところ。苦労して苦労して学んできたことを、惜しげもなく伝えてくれるところですね。フラメンコって、ただきれいに踊るだけじゃダメ、踊り手の心が見ている人たちに伝わらなければ何にもならないんだ、ということを教わりました。

今年は25周年の公演。ずっと愛情を持って教えてきてくれた先生に、当日は私たちが愛情のお返しをしたいです。




丸岡のぶ子さん

それまでフラメンコのキャリアを積んできた私が新しい先生を選ぶ時、美穂さんに決めたのは、彼女にすごく未来があって魅力的だったから。年齢は私より下だけど、それは関係なかったです。とにかく大正解だったですね。

彼女のフラメンコに対する真摯な思いには敬服するばかりです。根底にムイ・フラメンコを持った、数少ない日本人だと思います。精神的、舞踊的に、ものすごく優秀な人。彼女はいつもこう言いました。「できなければ100回やりなさい」と。私もそうしてきた。今、「スタジオ・ソイヒターナ」で指導する立場である私ですが、フラメンコに対する取り組み、考え方や教えることに関しては、彼女から学んだことがずいぶん多いです。25周年公演の今年、私はあくまでも生徒として出演します。




駒井和子さん

私は58歳でフラメンコを始め、来年は喜寿を迎えます。現在、生徒としては最年長。自分の子供と5、6歳しか違わない美穂先生にフラメンコを教わることが楽しくて、これからもずっと続けていくつもりです。

ふだんはとても気さくに私たちに接してくれますよ。レッスンが終わってからお酒を飲むひとときは最高に楽しい。でも、踊る時は別人。そこがまた魅力です。以前は週に3回のレッスンを受けていた私も今、週に2回。楽しく踊っています。




小松絹子さん

母が美穂先生にフラメンコを習っていたんです。私にできないことを母ができるのが悔しくて、私もカルチャーに通い始めたのがフラメンコを始めたきっかけでした。母と同じ先生に習わなかったのは、やはり私の母に対する対抗心だったと思います。

2年ほど経ち、田中美穂先生が日本に招聘されたファルーコの公演を観たのですが、あまりの感激に思わず美穂先生に手紙を書いたところ、何と1日でお返事をいただいたんです。美穂先生に習えるなんて思ってもいなかったのですが、それがきっかけで私も教わることになりました。やはり美穂先生に教わるフラメンコは、それまでとは世界が違いましたね。とても人間臭いというのでしょうか、ふだん見ていない人にも見てほしいフラメンコなんです。そんな、本来のフラメンコの良さを私も伝えていきたい。年齢を重ねても、心からフラメンコを楽しめる自分でありたいですね。




森眞奈美さん

私は1992年に、当時住んでいたニューヨークでフラメンコを学び始めました。日本に戻ってからも、ある教室に通っていたのですが、知人のすすめもあって美穂先生のところでお世話になりました。

現在、月曜クラスでアシスタントを務めさせていただくほかは、名古屋、東京で自分で教室を持って教えているのですが、美穂先生にはとにかく、ものすごく多くのことを学びました。フラメンコに関して、私の中で記憶にあるのは美穂先生に教わったことばかり。踊りに対する情熱はもとより、クラスの運営方針など、受け継いだことはたくさんあります。今回の公演が終わったら「私のところはもう卒業よ」と美穂先生に言われています。ソロでは1曲、「カンティーニャス」を踊ります。




鈴木ひさこさん

田中美穂先生ほどフラメンコの持つ“熱い血”を体現している人はいないのではないでしょうか。フラメンコの真髄を追求しようという思いは、私もほかの生徒も同じ。美穂先生の場合、その姿勢が生き方に現れているところがすごいと思います。指導者としては、アメとムチの使い方がとても上手な方だと思います。

踊りも時代とともに変わっていますが、美穂先生も新しい踊りを取り入れることにはとても敏感な人です。それは、毎年のようにスペイン人に師事し、それを自分の中で咀嚼して私たちに伝えてくれるところにも現れています。生徒がほかのクラスで習うのが自由なのもそう。当然、美穂先生の踊りも少しずつ変わっており、年々進化を遂げているのです。




中村と志恵さん

田中美穂門下生にキャリアの長い人が多いのは、踊りの技術以外に学ぶことがたくさんあるからではないでしょうか?私自身、長いフラメンコ歴の大半が美穂先生への師事で占められています。彼女のひたむきさ、フラメンコのアイレというものをいっぱい見せてもらってきた気がします。

決してモダンではない、昔ながらの踊りですが、それも美穂先生がいろんなフラメンコを学んだ中から身に付けてきたこと。人間的なひたむきさ、根性といったことに私はとことん惚れ込んでいるんです。踊り一筋で、ほかには何もしない人。私を含め生徒は皆、そんな自分たちとは違うものを持った美穂先生を慕っているのだと思います。




本田恵美さん

私は中学3年の時、横浜のカルチャーでフラメンコを習い始めました。当時、そこで教えていたのが美穂先生。途中、休止した時期はありましたが24歳までカルチャーに在籍し、代教をさせていただいたりしながら、ずっと彼女にフラメンコを教わりました。

その後、「あなたは本格的にフラメンコを勉強すべきよ」と、スペイン留学に向けて背中を押してくれたのも美穂先生でした。先生が踊りに対して常に勉強し、努力されているところ、年齢を重ねるほど、ご自分の踊りを工夫して常に魅力的であるところを見習っていきたいです。今、私は横浜、藤沢で教室を持つ立場にありますが、かつて美穂先生から教わった時の言葉の端々を思い出すことが多いですね。学んできたことが今も生かされていると同時に、指導者としてのあり方として今後も参考にしていきたいと思います。美穂先生のスタジオ公演からはしばらく遠ざかっていて、今回、10年ぶりの出演です。私の総括として男装で「ファルーカ」を踊ります。



※順不同

 
東北沢にアモール・デ・ディオスが誕生したのと同時に、オーナー夫妻のご好意でスタジオ3階に住み、教室を持つようになって早や22年。その前にも少しずつ教えていたので、教師生活は25年以上にもなります。昔から通ってくれた生徒たちも私と同じように年を重ね、体力も気力も若い頃のようではなく、めぐる環境も変化してきました。

このたび、つくづくクラスを眺めてみますと、私のスタジオはまるで定時制の高校か夜間大学のようだと思いました。年令も職業も能力もさまざまな人たちの集まり。プロもアマも入り混じっています。でも、これはこれで様々な人生にふれあえるコミュニケーションの場として面白いのではないかしら。私のスタジオはこれでいいのかもしれません。

今回の公演のシギリージャとタンギージョの群舞の人たちは、なんと半数が60代、70代なんですよ。その人生の先輩方の頑張りに拍手!!注目です。また、プロの人たちの胸のすくような踊り、観るものを楽しませるエンタテインメント、その間にあってソロを踊る実力がありながらこの度は先輩に場を譲ってもらい、活躍の場をあげられなかった生徒には申し訳なく思っています。けれど群舞の中でも宝石のようにピカリと光っているのでお見逃しなく。

東京クラス最後の大舞台。お力添えしてくださった方々に心よりお礼のBeso(キス)を送ります。皆様のあたたかいご声援とともに舞台の幕が無事に下りることを祈りつつ…。

田中美穂
(公演挨拶文より抜粋)

取材・文 藤戸良彦