4 月 29 日のライブでは、できるかぎりのことをやろうと思っています。ギターの人たちとも「とにかくいいものを一緒に作ろう」と話しているんです。どこまで完成度を高くし、見る人にとってどれくらい面白いものができるか、どこまで変化させていけるかという点において、リハーサルでもお互いの感性のぶつけ合いを試みています。
今までは、アレグリアスらしさ、ソレアらしさというように踊り分けということをきっちりやってきたつもりですが、“らしさ”について考えた時、フラメンコらしさってなに?という疑問にぶつかるんですね。
例えばアレグリアスではどうして泣いたらいけないの、とか、ソレアだって最後にはハッピーになるかもしれない、とか。シギリージャはいつも嘆きなのか、今の時代の感覚でいろいろな音をぶつけたっていいじゃないか、とか、細部にわたっていろいろな試みをしています。もちろんアレグリアスには歓びの要素が、シギリージャには嘆きの要素が多いわけですが、その中にもいろいろなことが含まれているということを考えて、ギターの方にもいろいろな音づかいをしてもらいます。
今回の舞台に関しては、私が今後、一緒に仕事をやっていく上でいい意味で喧嘩ができる方々にお願いしました。それだけ信頼関係が築けている方々で、今の私に考えられる最高のメンバー。このメンバーであれば、みんながお互いにいいものを出し合えると思っています。
私はよく「劇場で踊る人」という言い方をされるのですが、今回は、後ろには私と考えを共にする方たち、そして前には私を見に来てくれた方たちが、どちらも遠くない距離にいてくれること、そして舞台から見に来てくれた方たちの顔が見えるくらいの広さのところがいいと思い、劇場ではなく、エルフラメンコで行うことにしたんです。自分ができることをめいっぱいやろうと思っています。
その後は 5 月に日本フラメンコ協会の「 ANIFERIA 」と、「マノレーテ y 碇山奈奈」に出演、そして 6 月 5 日には 長野県伊那市 での舞台があります。日本での活動はそこまで。スペイン行きを決意してから半年くらい出発が遅れてしまいましたが、尊敬する碇山奈奈先生、そしてマノレーテと同じ舞台に立てるなど、貴重な経験もさせていただけるので、むしろ遅れて良かったかなとも思っています。ただ、教室をいったん閉鎖してしまうので、生徒にはたいへん迷惑をかけることになってしまったのですが。
「スペインでも自分を信じて生きていく」
スペインでは当面、ヘレスに滞在するつもりです。フラメンコだけが目的ではないのですが、私なりにフラメンコというものを捉えた時に、セビージャでもグラナダでもなくヘレスは、好きだけどずっと残しておいた所という感じ。ショートケーキでいうイチゴのようなもので、早く食べないとドロドロになってしまうという思いがあります。
グラナダでマリオ・マジャに踊りを教わりたいという気持ちもあるのですが、子どもも一緒ですし、当面はヘレスに腰を落ち着けて生活する予定です。踊ることは続けますが、スペイン語がきちんと話せるようになることと、スペインの歴史やフラメンコの変遷などを勉強というか、知りたいという思いがあります。自分自身を成長させることは日本にいてもスペインにいても同じだと思うので、環境の変化で自分がどんなふうに順応していくか、どういうふうに変わっていくか、自分を観察するのが楽しみでもあるんです。
| ここ数年、フラメンコ以外の音楽ジャンルの方とお仕事をする機会が多かったのですが、私としてもすごく面白くなってきているので、それはスペインでも模索していきたいです。そして新しい感覚を身につけて、日本に戻ったら劇場公演やライブをやりたいですね。 |

20 周年記念ライブの後は、「マノレーテ y 碇山奈奈 プーロフラメンコ− MI CAMINO −」に出演。「ANIFERIA2004」のソロ出演、「宮野ひろみの世界」(長野県伊那市)での舞台も控えるが、当面、日本で彼女の踊りが見られるのはそれが最後となる。 |
今のところは、スペイン滞在の期限は 2 年と考えています。実際に行ってみて変わるかもしれませんけれど。一つ言えることは、踊ることは絶対にやめられないということ。子どもと、そして私自身が成長していく上においても、私が踊るということは必要なことだと思っています。踊るということは、私にとっては絶対の存在。ということを言葉に出して言えることが、少しうれしいですね。
子どもを産んだということで、女性に生まれてよかったと思っています。子育てや日々の生活にはものすごいエネルギーを使いますが、それでも踊れるということがすごくうれしい。スペインに行ってから大変なことは当たり前で、私が思っている通りにはいかないとは思いますが、私としては自分を信じて生きていくつもりです。
今回の 20 周年記念ライブでは、見に来ていただいた方には生きる活力が湧いてくるような、そんな舞台をお見せしたいと思っています。ぜひ楽しみにお越しいただきたいと思います。
取材・文 藤戸良彦
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