第42回

吉良典城さん(舞踊家)

 京都でフラメンコ舞踊の指導を続け、「みんなのアカデミア」を標榜して開かれた教室運営を実践する吉良典城(きら・てんせい)さん。自ら「人に教えるために踊りを勉強してきたのかもしれない」と話すように、生徒の個性と可能性を引き出す独自の指導には定評がある。 9 回目の発表会が間もなく開催される。


吉良典城アカデミア・ダンサ・フラメンカ第9回フラメンコ・フェスティバルは
3月10日(水)19時から
京都会館第2ホールで
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 発表会は 1 年から 1 年 3 ヵ月くらいに 1 回のペースで行っており、今回で 9 回目になります。習い始めて間もない初心者から 5 、 6 年になる上級者、中級者、そして今回はカンテやギター研究者も出演します。


「私のフラメンコ」を楽しむための指導。「いろいろなタイプの人がいるほど教えがいがあり、楽しみも増えます」
 生徒でいちばん多いのは 20 〜 30 代の OL ですが、主婦や 3 歳から小学生の子どもたち、そして中学・高校・大学生など、あらゆる年代の人がいます。男性もいます。希望者による参加で、毎回、平均 30 〜 40 人くらいの出演です。

 今回はソロが 3 曲、少人数の群舞が 4 曲というように、それぞれ違った個性を存分に活かせるようにイメージしながら振付けしました。また、それぞれの曲の特徴がわかりやすく、踊りやすく、見やすくなるようにして、群舞は特にみんながいっしょになって一つの物語を演じるような構成を意識しました。

理解する以上に、心や体で感じることを優先

 私は大学時代に知人に誘われて、「ものは試し」でインド舞踊などにトライしているうちに、今まで見た記憶もない「フラメンコ」のイメージが感覚として体の中から湧き上がってきて、その瞬間、プロになることを決めていました。 「好きなアーティストはカンテやギターを含めてたくさんいますが、特にいうと、第一にはやはりエル・グイート。そしてファルキートやマヌエラ・カラスコです。好きなヌメロはブレリア」

 21 歳からエル・ポカ岡崎氏に師事し、のちにスペイン留学中は多くのアーティストに指導を受けましたが、最も尊敬する師匠はエル・グイートです。初めて舞台を見た時、体が震え出して止まらなかったのを覚えています。凄まじいエネルギー、無駄のない、その圧倒的な存在感に「この人だ」と直感し、舞台のあと、すぐに弟子入りを志願していました。それから気がつけば 2 年間、ずっと習い続けていました。

 帰国後に教室を開いたのですが、私は本当は、教えることをいちばんやりたかったのかもしれません。すでに指導を始めて 10 年以上たちますが、フラメンコ舞踊の指導というのは、本当にやりがいがあります。


ギタリスト、カルロス・パルドのピソで

 生徒は一人ひとり志す思いが違いますから、その思いや性格、個性に応じて、常に最適のアドバイスができるよう心掛けているのですが、理解する以上に心や体で感じることを優先しながら、個別に、その内に秘めているありとあらゆる可能性を引き出していくことが、逆に教える喜びや楽しさをみんなからもらっている感じです。

 フラメンコが好きな人でも、ただの好奇心でも、ストレス解消のためでも、自分を変えるためのきっかけでも、どんな方でも歓迎します。いろんな人がいればいるほど教えがいがあり、楽しみも増えますから。

フラメンコとは「人間そのもの」の魅力

 今は発表会に向かって、みんなのためにできることを尽くすだけです。あと、当面の予定としては、イベントなどでも楽しく踊れる機会を作っていければと思っています。生徒には、フラメンコをきっかけに自分を磨いて輝いたり、心から人生を楽しめるような生き方を見つけてほしいと思います。私としては、少しでも多くの人のためになることなら喜んでエネルギーを注ぎたいと思います。

 フラメンコとは、「自分の中にある一つの性格のようなもの」というか、一つの感覚みたいなものでしょうか。さらには「“私”との出会い」でしょうか。

 無限に湧き上がってくる感性や粋さ、面白さ、そして何より、はちきれんばかりの爆発的なエネルギーが、何もかも吹き飛ばして、最も自然体にさせてくれます。みんな一人ひとりが、自分の中にあるものをめいっぱいに感じて、「私のフラメンコ」を存分に楽しんでほしいと思います。フラメンコの魅力、それは「人間そのもの」の魅力だと思いますから。

エル・グイート、マノレーテらと。「スペイン留学中はエル・グイートをはじめマノレーテ、カルメン・コルテス、クリストバル・レジェス、タティ、シロー、ハビエル・バロンら多くのアーティストに指導を受けました」

 

取材・文 藤戸良彦