現在、日本の第一線で活躍する多くの舞踊家を育てた佐藤佑子さん。今回のスタジオ発表会での成果も楽しみだ。もちろん、自らの舞踊活動にも意欲的で、豊島区・要町に完成した新スタジオにもフラメンコへの思いを馳せる。


佐藤佑子スタジオ・カスコーロ
フラメンココンサートは
11月24日(月・祝)
東京・なかのZERO大ホールで
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 私が踊りの指導をする上において目標としていることは、一人で1曲を踊るための基礎体力とリズム感を養うこと、踊るための技術と心意気を身につけること、そして踊り手の持ち味を引き出し、高めてあげることです。今回の発表会においても、群舞の中でもその人の持ち味を生かせる構成を考えました。

 スタジオには、他の教室で3年、5年と学んだ人がよく来ます。「もう一度、基礎からやり直したい」と。見てみると、やはり踊れる基礎ができていない人が多いですね。トレーニングはそこからが始まりです。

 とにかく私は、基礎を大切にしています。なぜ基礎かというと、私自身が多くの公演活動を経験し、何がいちばん必要かを考えた時、「体力、行動力、リズム感、イコール体の軸」となるわけで、基礎は避けて通れないからです。

 そのことがいつの間にか広まり、訪ねてくる人が多いのかもしれません。特にいまの若い人たちは、技術を追いがちですが、フラメンコの踊りには暗黙の決まりごとがたくさんあって、それらを身に付けなければなりません。そうして基本ができてきて初めて、その人の持ち味を高めていく段階に入るんです。

巨匠、エンリケ・エル・コッホに学んだこと

 私は1970年から77年までスペインに滞在し、故エンリケ・エル・コッホをはじめ、多くの優れたアーティストに教えを受けました。中でもエンリケ・エル・コッホは「フラメンコの巨匠」と言われた人です。

 彼は耳と足が不自由なので、ステッキで体を支え、または机を支えにステップを教えたりしていました。お互いに腕を組んで踊ると、彼の呼吸が脈を伝わって、こちらに響いてきました。鏡など不要。魂の揺さぶりとでもいうのでしょうか。フラメンコの心意気、「アイレ」に満ちたものを自然に受け入れられる自分が、この空間にはありました。

 また、セビージャのほかにマラガのタブラオ、カナリア諸島、マドリードのタブラオに出演し、そこで強烈な個性を持った偉大なアーティストにたくさん出会い、刺激を受けました。これは私の宝ですね。そして、5年間もスペインの舞台に立てたことを幸せに思います。

 こういった経験を、フラメンコ舞踊を志す人に少しでも伝えることができたらと思います。私はとても不器用です。それでもできるんですよ!とね。

要町に新スタジオがオープン

 池袋のスタジオが今後もメインであることに変わりはありませんが、このほど、要町にも新しいスタジオを作ったんですよ。スペイン風の、とても明るくて開放的なスタジオです。

 来年くらいから本格的に使うつもりですが、そこでライブを開いたりすることも考えています。新スタジオについては、後日また、詳細をお知らせしたいと思いますが、12月18日には「ロサリオ・ロペス カンテリサイタル」を催します。

 彼女は、今では少なくなった情感の深い、味わいのあるフラメンコの唄い手です。名カンタオールと言われたラファエル・ロメロの弟子で、彼女の唄を日本で聴けるというのは貴重な経験だと思います。ぜひいらしてください。


取材・文 藤戸良彦