「フラメンコと人形の融合」。京都のベテラン舞踊家、吉川典子(ロサ吉川)さんがこの難解なテーマに挑む。その経緯と公演の見どころ、さらにフラメンコへの思い、教室運営についてうかがった。


フラメンコと人形の出逢い
「月の炎<La Vida 或る人生>は
11月14日(金)19時・15日(土)18時から
京都府立文化芸術会館で開催
詳細・お問い合わせはこちら

 今回の公演「月の炎」は、愛と別れ、再生をテーマにした舞台で、京都の老舗劇団「人形劇団京芸」の藤本文彦氏が人形を使って日本的な感情を表現し、私がフラメンコでスペイン的な喜怒哀楽の表現を試みます。

 役割としては、人形は母親との愛と別れ、旅立ちを、そしてフラメンコは男女の出会いと愛、別れ、旅立ちを演じます。舞台では、これらにストーリーが絡みながら進行し、月がそれを見守っている、という設定です。

 お互いは別々の場面で登場し、ストーリーもそれぞれ異なりますが、同時に舞台に出る場面も2ヵ所ほどあるんですよ。これに、スペインから招聘するカンテのエル・ボケロン、ギターのラモン・アマドール、バイレのエル・トロンボが絡んでくるのですが、このように、人形が醸し出す日本的な空気と、フラメンコに象徴されるスペインの奔放な空気が同じ舞台で融合するところが、今回の舞台の最大の見どころだと思います。

 今回の舞台は去年、京都府が主催した「創造空間2002」という踊りの祭典で演出家の名栗宇留さんと出会い、人形との競演のお話をいただいたのがきっかけでした。フラメンコファンだけではなく、踊り、創作人形に興味がある方など、いろいろな方にぜひ観ていただきたいと思っています。

カディスでのひととき

ボケロン、ラモン・アマドール、エル・トロンボ
プーロフラメンコの醍醐味が楽しみ

 フラメンコ、特にプーロフラメンコが好きな方にとっては、今回招聘するエル・ボケロン、ラモン・アマドール、エル・トロンボという顔ぶれはすごいと喜んでいただけると思います。

 ボケロンとラモンは、アンヘリータ・バルガスを招いての公演の時から、トロンボは前々回スペインに行った時に教室で踊りを習ったのがきっかけで懇意にしているんです。

 今はスペインでも貴重な、プーロフラメンコを表現するアーティストですからね。もちろん、今回の公演でも彼らが舞台に立つ場面では、とびきりプーロなフラメンコを見せてくれるでしょう。トロンボは2曲、私もアレグリアスとシギリージャ、ソレアを踊る予定です。

「生徒はだれもが、必ずいいものを持っている」

 私がフラメンコと出会ったのは1976年頃。最初はベニータ・ケイさんに教わりました。あとは単発でスペイン人に習いましたが、特に影響を受けたのはアンヘリータ・バルガスです。

 とにかく、生活そのものがフラメンコ。また、決して自分の振りを誇示するのではなく、歌を聴き、その歌に合わせて踊るところ、あくまでもフラメンコは内面を表現するものということに徹しているところがすごいと思います。ほかに影響を受けたのは、大阪のエルフラメンコに来たエル・トレオ。リズムの取り方が独特で、とても勉強になりました。


好きなアーティストはアンヘリータ・バルガス。好きなヌメロはソレア。写真はアンヘリータ来日時(03年)にスタジオで撮影

 教室を開いたのは京都に来てから。86年頃から少しずつ請われて、という感じでした。生徒はだれもが、一人ひとり持っているものも違うし、だからこそ、必ずいいものを持っていると思うので、いつも「根気よく、楽しく」をモットーとしています。これまでも、そして今もとてもいい生徒に恵まれたと思っていますよ。今回の公演でもみんな奔走してくれたんですよ。

 ロサ教室は、何といってもギタリスト、ハイメ吉川の存在が大きいです。彼によってリズムやパルマなどフラメンコの根幹を知ることができますし、もちろん、今回の公演でも音楽の部分でプロデュース、ギター演奏をしてくれます。

 彼もまた、日本で貴重なプーロフラメンコの表現者ですが、私もプーロフラメンコが好きなので、それらを生徒にもできるだけ見せて、感じてもらいたいと思っているんです。スペインからアーティストを招聘しているのは、そのためでもあります。

 今後も、今のまま、自然体で行きたいと思っています。フラメンコによって得られた出会いと友情を大切にしながら。


取材・文 藤戸良彦