「真夏の夜のフラメンコ」で
フラメンコの楽しさを知っていただきたい
いま準備しているステージは、7月25・26日に日比谷野外音楽堂で行われる「真夏の夜のフラメンコ」です。今年でもう32回を数えるんですよ。このフェスティバルを行うことになったきっかけというのは、40年前、すなわち私が初めてスペインへ渡ったときにまでさかのぼるんです。
あの頃のスペインはまだフランコ政権下で今とは全然違って、明るい太陽とは対照的に女の人の服装はとても地味で、男の人はいつも黒という感じでした。それでも、夕方にはお金持ちのご夫婦がきれいに着飾って散歩をする風景もあり、一見のどかに見える光と影の時代でした。今では夏ともなると若い人はおへそ出しルックですけどね。
あの頃、とても印象に残っていることがありましてね。マドリッドのアルカラ通りに下宿していたときのことなんですけど、私は夜になるととても元気が出るほうなんで、朝の5時ごろになるとしゃんしゃんしゃん、という鈴の音が聞こえてくるんす。ある時何かしら、と思って窓から下を見ると荷馬車なんです。ステキだなーと眺めていたら、それがなんと、ゴミ屋さんだったんです。日本にはないその光景を見て心が和んだのを今でも覚えています。
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野外フェスティバル「真夏の夜のフラメンコ」は、今年は7月25日(木)・26日(金)に開催。詳しくはこちらをクリック
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マドリッドでも夏はたいへん暑いんですよ。日中は40℃を超えます。そんな暑い夏のさなか、7月から8月にかけてフェスティバル・デ・エスパーニャという野外の公演があったんです。照明、音響等の設備は決していいものではありませんでしたが、やっている人たちの熱意がこちら側に伝わってくる、とても楽しい雰囲気のものでした。
それを見て「日本でもこういうものがあったら楽しいのになー」と思っていたんです。スペインから帰国し、舞踊団を設立して2年目にこの想いが実現した。それが「真夏の夜のフラメンコ」の始まりです。
劇場公演とは違って、この野外フェスティバルではいつも「フラメンコってこんなに楽しいものなんですよ」という気持ちを前面に出して取り組んでいます。今年は初めて「みんなで踊ろうセヴィリャナス!」と謳って、お客様参加型で行うことにしたんです。
その背景には、日本のみなさんがセヴィリャナスを踊る場を欲していらっしゃるという実情があったんですよ。会場には2500名まで入ります。ビールを飲み交わし踊る、楽しいフェスティバルにしようと思っています。
今年は予定が目白押し
来年は作品造りにじっくり取り組みたい
「小松原庸子スペインと40年」である今年は非常に充実しています。この間、九州から北海道までの日本公演を終えたばかりなんですよ。各地満員になりまして、ものすごい成功を収めることができました。その結果、うれしい事に来年も公演する事になりました。
8月には、スペインのラ・ウニオンという鉱山の町の歴史あるフェスティバルでの開会の辞を述べるという大役を受けました。作品上演もします。非常に光栄なことなんですけど、今までは詩人とか学者とか、偉い方々ばかり、舞踊手ではマティルデとマリオ・マヤ、私で三人目なんです。このラ・ウニオンで私のフラメンコへの想いを伝えられたら、と思っています。また、ラ・ウニオンのあとはブラジル公演が控えています。
9月は、セヴィリャで行われるビエナル・デ・アルテ・フラメンコ出演は辞退したんですけど招待を受けているので行きたいと思ってます。日ごろ一生懸命お稽古をしている若い人たちを応援する目的で設立した財団のコンクールが、今年始めにありました。つい先日までその入賞者たちを対象にスペインの先生が厳しいレッスンを行い、11月に開催されるフェスティバルに向けて猛練習をしています。
来年は毎年行っている1月公演は休んで、たっぷり時間をかけ、やりたい作品を煮詰めていこうと思います。40年間走りっぱなしで来ましたので、来年はゆっくり創作に取り組みます。
最近のフラメンコに思うこと
最近強く感じることは、「フラメンコはなんでもあり」と誤解されてしまっているということ。フラメンコは一見とても自由そうに見えますが、実は自由な中に非常に難しい決まりごとがあるのです。
それを踏まえないで、スペイン人のまねごとをしていてはだめですね。心から湧き出てくるものがなければ。本当の自分を出していかなければ本物に近づけません。
自分がいま現在何をどう考えているのか、どう生きているのか、ということを自問自答して、自分自身の考えをしっかり持つことが大切です。そして、それを表現できるようになっていって欲しいですね。
踊りというのは徹底的に好きにならないと上達しないんですよ。テクニック的には毎日お稽古していればある水準までは必ず行きますよね。でも、何が一番大切かというと、誰よりも何よりも「踊りが好き」ということ。マティルデ・コラルも言っていますけれど、踊りに対する愛が根底になければ、いい踊り手にはなれないと思います。
それからもうひとつ、みなさんに望むことは、決して日本人の良さを失わないで欲しいということです。いくらがんばっても私たちはスペインのジプシーとは違うのです。形から入らないで、どうか心から入ってください。
取材・文 轟 志津香
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