| フリーダ・カーロを知ったのは、たまたま彼女の本を知人に借りて読んだのがきっかけでした。もう夢中になって、一気に読みましたよ。
何よりも、その生き方に感動しました。人それぞれ、何らかの劣等感やハンディキャップを背負っているはずですが、彼女の場合は特にそれが顕著だった。それでも、そのことと常に闘い続け、明るく生きた彼女の慈愛と愛情を持った強さというものに心惹かれました。これはもう、並みの強さではないと。1年後にまた読み直して、いつか舞台で彼女を演じようと決めていたんです。
実はフリーダ・カーロの人生は、夫であるディエゴ・リベラの存在を抜きには語れないんです。ディエゴは世界的に有名な壁画家でしたが、強く純粋なイデオロギーを持ち、メキシコ共産党員としてメキシコ人民の解放運動にたいへんな情熱を注いだ人でもあるんです。彼はフリーダに絵を教えたわけではなく、誇り高いメキシコ人としての行き方を自らの行動をもって教えた。それだけの人物だけに、舞台でディエゴ役を誰にお願いするか、このことにずいぶん時間がかかりました。
そんなとき、ふっとアレハンドロ・グラナドスのことが思い浮かんだんです。彼はその体躯と風貌からも、たいへんなカリスマ性を持つバイラオール。これほどの適任はいないと思いました。3年前に1度お願いしたのですが、そのときは彼の都合がつかず、来日できなかった。今回、ようやく実現したんです。
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「フリーダ・カーロ」の見どころ
舞台の見どころは3つあります。1つは、フリーダが交通事故に遭ったとき。もともと小児麻痺だった彼女は、この事故で下腹部に針金が貫通し、以後、30回の手術と28個のコルセットに支えられながら、肉体的、精神的苦痛を絵筆で表現するようになるのですが、それは病院で悲嘆に暮れている彼女に、母親が鏡を与えたのがきっかけでした。鏡を見ながら自画像を描き始めたのが、画家としてのフリーダの第一歩だったんです。
そして、2番目の見どころは夫となるリベラとの出会いのシーン。舞台はメキシコからニューヨーク、パリとめまぐるしく移ります。彼女に強烈なインスピレーションを与えた男性との出会いであり、また、波乱万丈の人生の始まりでもあったわけです。
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「日本で踊ってほしい」「日本で教えてほしい」という日本人の声に応えて、81年に帰国。オーケストラとの共演、オペラ等への客演、文化庁移動芸術祭への参加など舞台活動も幅広い
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3つ目は、彼女の死に際。一度、リベラとは離婚し、やがてまた、一緒になるのですが、その間、彼女は数々の恋に落ち、また、革命のために精力的に活動した。そんな激動の人生を生きたフリーダ・カーロの最期の場面です。
もちろん、ストーリーを追ったステージにはできないですが、私自身が最も表現したいと思ったのが、いま挙げた3つのシーン。皆さん、ぜひ楽しみにしていてください。

東方の国ハポンからやってきたダンサー、岡田昌巳は20年間、スペインの舞台、ショービジネスの第一線で活躍し続けた |
「踊りに対して几帳面であってほしい」
私は40年間ずっと、アルティスタとして創作的な舞台を志向してきました。スペインに行ったのは、クラシコ・エスパニョールが好きだったから。親には「2年」と言ってスペインに渡ったけど、最初からそのつもりはなかったですね(笑)。
20年スペインにいて、プロとして凌ぎを削って生き抜いてきた。81年に日本に帰国し、以後、毎年開催している「岡田昌巳スペインを踊る」は今年が22回目になります。そのテーマが、今回は「フリーダ・カーロ」なんです。
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私自身も、かつては博品館のソロ・コンサートで7曲踊ったこともありますが、今の日本人舞踊家には、もっともっと踊り込んでほしいですね。スペイン人を見ていると、とにかくよく踊る。身体能力の違いもあるんでしょうけど、練習の時から踊りの量が違います。
いまフラメンコを練習している人たちにも、このことを言いたいですね。先日、ビエナルに行ってきたんですけど、そこにクルシージョを受けに来た子たちを見ていても、スペイン人はもちろん、ドイツやベルギー、オランダなど、海外から来た子たちはものすごく真剣にレッスンを受けていました。踊りの訓練だけではなく、知識の吸収ということにおいても。
いまのフラメンコの踊りは「何でもOK」みたいなところがありますよね。でも、本当は「やってはいけないこと」というのも厳然とあって、スペイン人は練習生でもそのことを理解したうえで踊っているんだけど、どうも日本人は勘違いしている人が多いみたい。練習は一つひとつの技術の積み重ねだから、段階を追ってきちんと修得していってほしいですね。
もっと踊りに対して「几帳面」であってほしいんです。スペイン人でも、うまい人はみんなすごく几帳面に踊ります。思い込みでは踊れないんです。もちろん、頑張っている指導者、練習生も大勢いますよ。やってはいけないことをピシッと指摘する指導者もいます。
いま日本はフラメンコブームだけど、教える人も習う人も、もっと視野を広く持って、謙虚に取り組んでほしいと思います。いまは特にスペインに行かなくても、日本でフラメンコを学べる環境があるのだから。
取材・文 藤戸良彦
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