| ―マノレーテの来日公演は10年ぶりになりますね。
エランヴィタールの公演としては2000年、2003年と作品(忠臣蔵)が続いたので、次はスペインからアーティストを呼ぼうということでスタッフに意見を聞いたところ、マノレーテを挙げる声が多く、招聘の実現に至りました。
―彼は碇山さんのフラメンコへの取り組みに大きな影響を与えたとお聞きしています。
85年から94年にかけて何度か日本に招き、同じ舞台で踊りました。きっかけは彼の来日時、エルフラメンコで踊りの指導を受けたことなのですが、とにかく踊りも日常の言動も「かっこいい」のひと言に尽きましたね。その踊りを真似ることができるかというと、とてもそうはいかないのですが、私が追求しているフラメンコが彼にあったことは確かです。
―具体的には、どのような踊り手ですか?
静かでシンプルだけど力強い、緊張感のある踊りをする人です。特に足の動きが強いですね。特別なアイレを発するタイプではなく、決して熱く迫ってくるというわけでもないけれど、気がついたら彼の世界に入っている。そんな印象です。
スッとしていて、動きにムダがない。見ていて踊りに透明感があります。実はとても難しい、複雑な動きをしているのですが、彼はそれをあまりに楽々とやってのけるものだから、大したことをやっていないように見えるんです。でも実際は、どんな時でも決してやさしく踊ろうとはしない人。マリオ・マジャ、エル・グイートら、彼と同世代の男性舞踊手の中でも、その踊りは、きわめてエレガントなイメージがあるように思います。
歌への反応を見ていると、それが自然に身についたもので、決して頭で考えた踊りではないことがわかります。いわゆる"玄人好み"といえるかもしれません。
―10年ぶりとなると、マノレーテを知らない人も多いと思います。
今回ゲストで出演する箆津弘順さん、宮野ひろみさんと生徒の何人かは、前回の公演で舞踊団員として舞台を共にしていますが、まったく初めてという生徒も多いです。
彼と同じ舞台で踊るというのは、踊るにあたっての本質的な資質が問われます。体が切れないとダメ、足が強くないとダメ、バランスもよくないとダメ。そういうのがないと、彼のパソが全然生きないんです。肉体的にパソはわかっても、本来、彼がこうであるべきだというかたちでやるのはすごく難しい。
今後、リハーサルに入っていきますが、そういう技術的な面だけではなく、同じ仕事場にいて、彼のテンションの高さについていくというのは、レッスンでは学びきれないこと。生徒にとっても貴重な体験になると思います。
―どのようなステージになりますか?
これまでもそうだったのですが、コンサート形式で順番に1曲ずつ、ヌメロを踊っていきます。マノレーテはソロと、私とのパレハを1曲ずつ。あと、箆津弘順さん、宮野ひろみさんと生徒たちも加わってのミニ作品を15分ほど。私としては、あくまでも出演する全員で一つの舞台を作っていきたいと思っており、観に来られる方には、緊張感のあるプーロフラメンコの醍醐味を堪能していただきたいと思っています。
―日本にもマノレーテのファンは多いと思いますが。
10年前の公演を観て、今回も楽しみにしてくれている方は多いと思います。この10年で日本のフラメンコの踊りのレベルも上がりましたし、スタイルも衣裳のセンスもよくなった。マノレーテを知らない若い人たちにも、この世代のスペイン人の踊りはぜひ観ておいてほしいと思います。
―マノレーテ自身は、10年前に比べて変わりましたか?
今も多くの舞台に立っており、基本的には変わらないのですが、以前より、静かにするところはさらに静かになったという印象です。さらに複雑になったといえるかもしれません(笑)
―碇山さんご自身は、どのようなお気持ちで臨まれますか?
緊張感のある、スカッとした舞台を観ていただきたいと思います。同じ振付けでも、歳月を経たことによって違うものが出てくると思いますし、マノレーテと構成、振付けを作っていくことで、私にとっても新たな体験を加えたいと思っています。
観る人が日常とは違う世界、違う感性を感じられるような舞台にしたい。大人のフラメンコをお見せしたいと思っています。
取材・文 藤戸良彦
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