| あっという間に、クリスマスとお正月が過ぎましたね。私は、12月24日から1月頭までフランスにいました。彼の実家でのクリスマス・イブとクリスマス当日の食事はすごいご馳走で、つい食べ過ぎてしまい、その次の日から胃痛になってしまいました。
ヘレスに戻ってからは、まる3週間くらいの間、フラメンコの雑誌用の取材と原稿書きに追われる毎日を過ごし、そしてここ数日、やっといつも通りに生活しています。
その雑誌の取材では、ヘレスのフラメンコ愛好家5人をインタビューしました。フラメンコファンといっても、日本でみんなが思い浮かべるフラメンコ舞踊のファンではなくて、フラメンコの歌、しかも旧いスタイルの歌のファンたちです。フラメンコの発祥地のひとつであるここヘレスでは、フラメンコといえば歌のことなのです。
ヘレスには、愛好家たちが集まるサークルがいくつもあって、会員のおじさんたちが熱心に活動しています。そう、ここで驚いてほしいのは、会員はほとんど「オジサン」だ、という点です。
今の日本を中心とした、海外へのフラメンコ舞踊・フラメンコ音楽の普及は、かっこいいお兄さんやお姉さんアーティストがやってますよね。だから、私たちは「フラメンコってなんてステキ!」と思って、この世界に憧れたりしているわけです。でも実は、あのイメージはマーケティングによって創られたものなのです。
20年以上もサークル活動に情熱をかけてきたヘレスのおじさんたちは、みんなそろっておデブです。「ダンディなおじさま」ではなくて、「オヤジ」という言葉がぴったりの男性たちです。そんな裏の真実(?)を知っている私は、日本フラメンコの状況は「売れてるファッション誌に載ってしまった下町の高架下にある赤提灯の居酒屋に、ブランドバッグを持った若いOLが友達を誘って詰めかけている」図に匹敵するなあ、と思ってます。
ここのおじさんたちが敬愛しているのは、歌い手に1本のギター伴奏のみ、のごくごくシンプルなフラメンコです。だみ声の歌い手が音程をおもいっきりはずしたり、ギタリストは単純な和音を繰り返すばかりの、音楽的にはほどんど魅力のない、はっきりいって退屈なスタイルなのです。するめいかのように、噛めば噛むほど味が出る、また逆に言えば、よく噛まなければ旨みがでない、という芸術なのですね。
今、世間で注目されているフラメンコとは、もともと華やかな性質を持つ他のジャンルの音楽や舞踊に、フラメンコの要素を取り入れて発達させたもの、とも考えられます。
オジサマ方をインタビューした後、私もいろいろ考えてみました。かっこ悪いものよりかっこいいもの、古いものより新しいもの、ゆっくりよりも速いこと、汚いものよりきれいなもの、おばあさんより女子高校生の方が、世の中で売れる要素を持っています。
でも、それは見かけは確かにいいけれど、その価値は表面的である場合も多いのではないだろうか。日本は、なんだかんだいっても経済的には豊かな国。そうすると、情報もたくさんあるし、欲しいものも割りと簡単にすぐ手に入る。
コンビニの普及率がいい例です。電気屋に行かなくても電池が買え、昔のように牛乳屋さんの朝の配達を待たずして24時間、牛乳が買えます。でも便利さ快適さの代償として、ひとつのことをじっくりと時間をかけて味わう豊かさを失いがちになり、なんとなく足りない感じに苛まれたりしませんか?
ヘレスのこのおじさんたちは、飽きずに20年、30年前の同じ歌を繰り返し聴いては、毎回感動しています。今、スペインでも日本でも流行っている「売れているフラメンコ」で、30年後も残っているものはたぶん少ないでしょう。なぜなら、歌う、踊る目的が違うからです。かっこ悪くて古くてちょっと汚くても、それが見せ掛けではなく真実を語ったものであれば、人の心の深いところを震わせます。
逆にかっこよくてきれいで若くても、表面的なアートであれば年取ってかっこ悪くなったら、その価値は半減してしまうでしょう。自分の人生の中で、同じものでも噛めば噛むほどに美味いなあ、と思える感性を磨いていけたら、ここのおじさんたちのように、何十年間も満足して楽しんで生活できるんだな、と思いました。
たくさんの情報をざっと処理していく時間と、ひとつのことをじっくりと深く観察する時間。同じだったらどっちを選びますか?ひとつのことを、、、と言いたいけれど、それじゃあ世の中についていけないと思う人もいるでしょう。
その一人が私です。毎回、自分自身と葛藤しています。他人と比較して自分が劣っている部分を発見すると、つい表面的に繕いたくなってしまう。みんなやってるとか、みんな知ってるとか、みんなできてるとか、だから私もあれもこれも、、、。
でも、私が本当に欲しいものは、噛み締める喜びを知る自分です。おばあさんになってますます磨きがかかるような人生を送りたいものです。
| 「やっといつも通りに生活しています」と書き始めた次の日から、熱が出て寝込んでしまいました。今日ちょっと良くなったので続きを書きました。この1、2年、風邪をひいてばかりなので厄年の影響かと思ってます。女性の体力の変化はこの年齢なんでしょうか。頭も肩も腰も痛い!と思って寝ていると、早朝から隣のおじいさんが自宅の改築工事をしている大きな音が聞こえます。引退した元大工さんで、数ヶ月前に古い古い大きな家を買って、ほとんど1人で毎日工事してるんです。70歳はいってると思います。すごい!その体力と気力!33歳でハアハア言ってる自分が恥ずかしい。 |

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