| いろいろあって楽しめた、ある日曜日のことです。
まず、朝10時に起き朝食をとって、自宅から徒歩10秒の広場で開かれる、蚤の市を覗きに行った。アンティーク家具から、捨ててあったボールペンまである。新品を売る店は少なくて、その殆どは中古品か、ゴミ(?)。ヘレスの普通の商店は日曜休日なので、暇をもてあます家族やカップルなどを中心に、結構人が集まる。
もちろん定価はないから、値段交渉の末、売買する。毎週日曜日、私は彼と、何を探すでもなくこの市をぶらぶらと見てまわる。そうすると、たまぁに掘出し物に出会う。
この日は、フラメンコの古いLPレコードを4枚買った。1枚3ユーロと言われたが、結局4枚で8ユーロにしてもらった。これを売っていたおじさんは、広場のベンチに10数枚のLPを無造作に並べ、自分もその端に存在感薄げ腰掛けていた。その様子から、蚤の市に出店する許可書を取ってないだろうことが想像できた。
私たちは、買ったLPを剥きだしで脇に抱えて歩きだした。そうしたら、腕には入墨をして不精髭を生やした他の露店のお兄ちゃんに「ちょっとちょっと、そのレコード見せてよ!」と声をかけられたので差し出すと、その中の1枚を見て「おおー!こいつはすげえ歌い手なんだぜ、知ってるか?」と聞く。
私「もちろん!知ってるわよ」と答える。そして、LPの表紙が見えるようにして、またそれを脇に抱えて家に戻った。今日はいいもの見つけたわ、とほくそえみつつ。
いったん家に寄り、買ったものだけ置くとすぐに、彼の車でヘレスから約一時間半のボロニアという小さな村の近くにある自然食レストランに出かけた。レストランといっても、数人の外国人が自分たちの住んでいる村の離れを、「自然体験村」とネーミングして週末だけ食事を提供したり、講演会や音楽会、演劇会などを企画しているところだ。
この日初めて行ったので迷った。ボロニアまでは地図に載っているのだが、その先の道は地図になかったから。途中、人に聞いたが知らないと言われた。
車一台分の狭い道を進むと、羊の群れが向こうからやってきた。近くに羊たちを誘導していそうな人間も番犬も見当たらない。羊の首に下がった鈴の音だけがあたりに響いた。また少し行くと、今度は乳牛の群れが道を塞いでいた。私たちの車の脇をゆっくりのったりと歩く。窓から手を出すと触れる距離をだ。
そのうちの一匹が、どうしても道の真中から移動しないので、私たちが牛を避け、道からはみ出して追い越した。
そして、やっと手書きの看板を発見し、無事目的地に到着した。車を降りて、砂利の坂道を下るとそのレストランというか、食堂があった。木と石と藁と廃材などを利用した建物だった。海の見える見晴らしのよいテーブルに座った(全席とももれなく見晴らしがよいのだが)。
彼らは4人で料理と給仕を担当していた。メニューは基本的には無農薬有機栽培の野菜料理。今日の定食は、豆腐のパテとキノワのオーブン焼き、ミックスサラダ、なすのベシャメルソース、そして天然酵母を使って石釜で焼いたピタパンだった。
彼らの動きはゆっくりで、私たちは席に着いてから食事にありつくまで一時間は待たされた。が、すごくいい気分だった。時々、犬や猫や子供が足元までやってきたりした。そして、やっと運ばれてきた定食を口にする。
「おいしい!」
私たちは顔を見合わせた。それぞれのおかずには個性があって、でも他の料理をじゃましない。味に深みがあって、食が進んだ。お腹がとても空いていたけれど、早食いしたい気分にはならない。逆にゆっくりと味わいたい感じ。よく噛んで食べなさい、と言われなくてもそうしたくなった。
食事の後、彼らと少し話しをした。ナチュラルに生活するということは、今の社会に逆行することだから、なかなか迅速にはことが進まないらしい。「Poco
a poco(少しずつ)」と言った彼らの言葉には、気休めではなく、本当に「時間がかかっていい」と思っている様子が感じとれた。
すっかり日が落ちたころ家に戻った。一時間くらい休んでから、今度は家の目の前にある教会へ、クラシックコンサートを見に出かけた。隣のセビージャ県から来たオーケストラで、バロック音楽の演奏だった。
私たちは、少しは正装に見えるように着替えてから家を出た。夜9時をちょっと過ぎた頃、演奏は始まった。会場になったこの教会は、ゴシック様式のものだが、老朽化がはげしかったため、数年かけて修復し、つい半年くらい前に再び開かれたばかりである。
祭壇の金色がやけに濃く見えた。高い天井の教会内に、チェンバロとバイオリンの音が響く。一部が終わると近所で画材屋さんを営む初老の男性が近寄ってきて、どうだ、すばらしいだろう、と話しかけてきた。彼は信心深い。2部では、ソプラノ歌手も登場。静まりかえった教会の空気を繊細に揺らした。
私は、クラシック音楽の知識がほとんどないので、演奏、演目については語れないが、クリスチャンではなくてもこういった神聖な場所で音楽を聴くと、安らいだ気持ちになれるなあ、と思った。私がやってるフラメンコとは、ルーツ的には対照的な音楽なので、私はこの演奏家の人たちって普段はどんな生活をしているなかなあ、と想像しながら聴いていた。
今日出会った人たち、LPのおじさん、入墨のお兄さん、自然の中に生きる若い外国人、クラシック演奏家、地元のおじさん、みんな違った生き方してるよなあ、と思った充実した日曜日でした。

| 今、これを書いている最中に、外から楽団の音が聞こえてきた。また何かイベントがあるのかなあ。スペインってしょっちゅうお祭りとかフィエスタとかがあるんだよね。ちょっと何やってるか見てくるね。、、、、マリア様の山車が家の前の広場を行進してた。ベランダからよく見えたよ。 |

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