|
私たちの結婚式<といっても家庭裁判所で証人2人の同意のもとにサインをするという式、スペインで最も簡潔な結婚方法>の2日前の水曜、彼のお母さん「ブル」と、その古い友人夫婦がフランスから到着。彼らからプレゼントをもらったりして、にわかに結婚気分が高まった。
事前に、裁判所の人から「式当日、やりたければ指輪の交換してもいいし、ウエディングドレス着てきてもいいですよ」と言われていた。本人と証人さえ揃っていればいいから、後は好きにやってくれと言う感じ。ただし私たちの持ち時間は約5分のみ。私は、ドレスを着るつもりはなかったのだけれど、気の利く友達が自分のドレスを貸してくれた。だから、その好意に甘えて着用することにした。
金曜当日、午前10時。ブルと友人夫婦の奥さんキャリーと一緒に、女たちだけで、友達のジプシーの家に行った。スーパー美人ジプシーの奥さん、カルメンにヘアメイクをしてもらう約束をしていたのだ。カルメンは、私を冷房の効いたサロンに座らせ、さっそくファンデーションを厚く塗り始めた。
「女はいつもきれいでいなくちゃ、子供たちのためにも旦那をいつも自分に注目させておくのよ」と、家庭円満の秘訣などを教えてくれながら。その旦那さんホアンは、結婚10年以上の今もなおカルメンに夢中である。事実、彼女は4人目を妊娠中だし。
サロンに繰り返しかかるBGMのCDは、彼女が歌うフラメンコ風「アベ・マリア」。さて、眉毛もくちびるもカルメン風になった私は、純白のウエディング衣裳に袖を通した。自分でいうのもなんだが、スーパー美人日本人に仕上がった。この日の私のスタイル、日本の友人が貸してくれたシンプルなドレスとベールに手袋、ヘレスの友人が前日にプレゼントしてくれた縦長の光るイヤリング、また別のヘレスっ娘が買ってくれた編み上げの白い靴。私が「持ってない、用意してない」と言ったら、魔法のごとく全てが届いた。これは、まるでシンデレラのようだ、と思った。
スーパー美人ジプシーのカルメンは、最後の仕上げにと金色になるクリームを私の両腕や首に塗りつけ、アモール・アモール(愛情・愛情)という香水をたっぷりとふりかけてくれた。

●
12時半、白い教会、、、ではなく、何の味気もない家庭裁判所に到着。この日は5組くらいのカップルが結婚予定で、私たちは最終組。彼、ニコラもすでに来ていた。
教会ではないから対面の瞬間になんのドラマティック性もない。しかし、この順番を待ってる間にも、日本人シンデレラへゆりの花のブーケが降ってきた。カルメンが「ブーケがないなんてだめよ、ほら」と言ってポンとくれた。近くの花屋で急ぎ買ってきてくれたのだ。
1時20分の予定が、ここは南スペイン、やっぱり遅れて、2時過ぎにやっとこ部屋に通された。参列者は、証人役をお願いしたホアン・アントニオ、美人ジプシーの旦那ホアン、義母ブル、キャリーと旦那さん、地元の友達のヘレサーナ(ヘレス女性)、ミラグロの6名のみ。壇上には裁判官が2人いた。
その1人が早口で法律を伝える。そして、「では、お2人は立ってください」と言った。私はとっさには理解できずに座ったままだったから「すみません、外人なもんですから、フランスと日本なんです」と誰かが答えた。
裁判官「ニコラさん、あなたは自分の自由意志によってこの結婚を、、、、、ナントカカントカ」
ニコラ「SI(はい)」
裁判官「MAKIさん、あなたは、、、ナントカ」
私「SI(はい)」
裁判官「これをもって2人の結婚の申請を受理します」
ジプシー、ホアンが「オーレー!」
みんな「オーレー!」
ブレリアのパルマで拍手。指輪の交換。
私「どっちの手にするんですか?」
裁判官「スペインでは普通右手ですよ」
誰かが「ベソー!(キッス)」と言ったので、私たちは軽くベソ。
退出するとき、感激でちょっとだけ涙がこぼれた。
●
昼食にはイタリアレストランを予約しておいた。ヘレスで私たちがひいきにしている店だ。7人のゲストを招待した。ここのオーナーがチョコレートムースケーキをプレゼントしてくれたので、私たちはケーキカットを真似てみた。みんなで大きなワイングラスを揺らしつつ、モツァレラチーズをつまみつまみ、ヘレス一おいしいケーキ屋のケーキをお互いのフォークで彼の口に運び私の口に運ばれ。人々の愛に囲まれたこの時間、私は穏やかな幸せを感じた。
お開きにするとき、ジプシーホアンが言った。
「MAKI、まだびっくりプレゼントがあるぜ」
私「?」
ひとまず家に帰った。でも、今晩だけはちょっとロマンチックにするために、市内のプチホテルで1泊しよう、と事前に決めていたので荷物の準備を始めた。
彼「水着も持っていったら?」
私「水着?」
じゃーん!彼の車が着いたのはヘレスで一番伝統ある5つ星ホテルの玄関だった。
私「なんで?なんで、ここ?」
「ホアンのアドバイスなんだ。このバカ暑いのにプールなしのホテルの部屋で汗かいてる気かってさ。裁判所に行く前に一緒に予約入れに来たんだよ」
●
私たちはさっそくプールに直行。ほんの数人が日光浴しているのみで、ほとんど貸切り状態!私たちは寒くなるまで外にいた。
部屋に戻って今度は泡のお風呂!お風呂の後は、ホテルのレストランのテラスで夕食。ピアノ演奏なんかもあって豪華豪華。翌日は朝食をルームサービス。部屋のベランダで、白いバスロープを羽織ったままのリラックスした格好のまま、プールの庭を眼下に遅めのコーヒー。ああ、プリンセス気分だわ。
さて昼の12時、早くもシンデレラが現実社会に戻る時間がやってきた。もう「持ってないの」と言っても欲しいものは降ってこない。この日の思い出にホテルのマーク入り便箋をバックに入れ(シンデレラ終わりかけ状態)、チェックアウトしてホテルを出たときには、昨日のスーパー美人顔はすっかりはげ落ち、いつもの私顔に戻っていた。
そして、いつものように彼の傷付いた中古車に乗って、いつもお馴染みの道を通って雨漏りのする自宅へ向かう。
ただ、いつもと違っていることが1つ。
私たちの右手には銀色の結婚指輪がはまっている。
この2日後、結婚パーティーを開いた。外人同士の結婚だから、あまり人が集まらないかも、と思っていたが予想を反して大勢の人が来てくれた。友達が協力していろいろなつまみを作ってくれていた。私は、大量の焼き豚とガスパチョ(アンダルシア名物冷たい野菜スープ)とトマトのサンドイッチを作った。パーティーは適度な盛り上がりを繰り返しつつ、夜中の3時半に終わったが、ガスパチョを出し忘れてしまったことに気がついた。翌日、バケツに1杯分のスープを近所の行きつけのバルに寄付した。「MAKIが作ったガスパチョだよ」と言って地元客に配っているのを聞いて、ちょっと気恥ずかしく思った。
※飯塚真紀さんは現在、日本に帰国中。夏以降の日本でのライブ、クルシージョについてはこちら、またはJスパ!エンターテインメントをご覧ください。 |

|