実は、6月18日にヘレスで結婚することになった。相手は、このエッセイにも書いてきた、フランスはマルセイユ出身のニコラ(「ピープル」の第2回目に登場)、28歳(7つも年下)。付き合って5年とちょっと。思えば、この間に何回真剣に別れ話をしたことか、、、。

出会った当初、彼ははっきりと言った。

彼「結婚する気はないんだ」

私「ふーん」

フランスには結婚しないカップルが多い。そんな人たちのために「公認カップル」という、結婚とは別の社会的地位が保証される法律が存在する。このシステムでは同性愛者でも公認の2人になることができる。従来の結婚システムではカバーできない、現代における人間関係の多様化(離婚、再婚、未婚の母、女性の社会進出、男女平等、移民、宗教、国際結婚、同性愛者人権、など)が生んだ法である。

彼「結婚なんて偽りだよ。形式を通して約束するのではなく、お互いの気持ち1つで繋がっていける関係こそが本物だろ」

私「ふーん」

私は、自分の人生において結婚をするつもりでいたし、子供は是非欲しいと思っていた。

彼「子供は俺の人生には必要ないな」

私「ふーん」

2人の恋人関係を保っていくにあたって、この将来に対する意見の違いが問題の核心だとすれば、文化の違い、年齢の違い、家庭環境の違い、外国在住の不安定さ、自由業という仕事などが更に多くの複雑さを呼んだ。なぜ子供がいらないか、なぜ子供が欲しいかを、ときにはお互い真っ赤に興奮しながら主張しあった。

この様な最中、知り合いの何組もが結婚し、そして出産していった。

彼「日本人の友達と話したり、日本を訪問してみて理解したよ。日本社会においては、結婚の重要度がかなり高いんだね」

私「でしょう!」

彼「日本人であるMAKIのために結婚するのもありかなあ」

私「でっしょう!」

それじゃあ、そのうち結婚しようか、という時期が続く。

しかし、私は次の段階に進みたいから、何かにつけ“うちの姪っ子ってかわいいのよー”話をする。また丁度良く、私たちの共通の友達夫婦(日本人男性、スペイン人女性)がダブルの女の子を産んでくれた。この子の成長を目の当たりにする度に、
彼「ダブルってかわいいよなあ。万が一持つなら娘がいいなあ」

私「!!!!!でしょでしょう!」

そしてある日、フランスに里帰りしている彼から国際電話があり、
彼「MAKIにフランス語教えるためのテキストを買ったよ。だって、俺は自分の子供とフランス語で話したいからさ、そのときMAKIが何を話してるのか分かんないのはいやだろ?」

私「ふーん(内心はとてもびっくり)」

こうして数年かけて彼の考えは変わっていった。

2人で日本にいた今年の初め、フランス大使館に行ってどこの国(フランス?日本?スペイン?)で結婚したら一番簡単な手続きで済むか質問した。スペインじゃないの、と言われたままにたくさんの書類を揃え、ヘレスの裁判所に提出した。提出してから審査が済むまで約1ヶ月、もう1度裁判所に行って、結婚同意書にサインする日、つまり入籍日を決められた。それが6月18日である。ふう、やれやれ。

裁判所で結婚するのは、スペインで一番簡単で質素な方法、つまり紙の処理をするだけである。

5月22日、マドリッドでスペイン皇太子の結婚式が行われた。当然、当日は何局ものTV局が1日中生中継。たっくさんのスペイン人がTV画面に釘付け。でも、残念なことに花嫁が登場するときにひどい大雨になる。本当は赤いじゅうたんの上を、大勢の見物人の中、静々と歩いて教会に向かう予定が、びしょびしょのじゅうたんの脇を、リムジンに乗ったまま迂回して教会入りするしかなかった。

彼「しめしめ、そうは上手くいくもんかい。だいたい結婚式なんかで世間が騒ぐなんてバカバカしい!ただの儀式にこんなに大金使って、無駄だよ」

私「ふーん(あららぁ、結婚したくない病が出ちゃうかなあ)」

TVの中の皇太子妃レティシアさんと自分をダブらせて、ちょっぴりうっとりしていたのにな。

しかし心配は無用だった。入籍日の立会人(2人必要)の件や、翌々日に予定している友達同士のホームパーティーの詳細を決めるためにあちこち電話しているのは、私ではなく彼なのだ。それぞれの国からの親族の出席者も、私の方は0人なのに、彼の方は4人いる。知らないうちに結婚指輪も注文してあった。


姪っ子の写真を見ながら言う。

私「子供は3人くらいいてもいいかもね」

彼「ノー、ノー、ノー。1人で十分さ」

私「ふーん」

この「ノー」がいつかは「イエス」に変わるのか?
私たちの新ストーリーが今始まろうとしている。


今年はヘレスの天気が変!もう6月になろうというのに、まだ雨が降ったりして寒い日がある。普通ならもうとっくに夏の装いをしている時期なのに、未だに上着が必要だ。アンダルシアから太陽をとったら、魅力半減どころか4分の3減。現実よりも、気持ちの方が先に夏に向かっているため、数日前にたいして暑くもないのに自宅の中庭にパラソルを出した。外用のプラスティック椅子に敷くクッションも、置いたと思えば、雨降りそうだからってしまったり、出しっぱなしにできない。5月22日マドリッド、大雨の中の王室結婚式をTVで見た後、半分晴天のカディスまでドライブ。海岸で米粒ほどの巻貝を拾って帰ってきた。
※飯塚真紀さんの夏以降の日本での活動スケジュールはこちらをご覧ください。

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