| 恋愛するにあたり、イロイロな面で賢い女の子に対抗するために、男子にあたえられた唯一の能力がある。
それは、この人は「自分より強いか、弱いか?」を瞬時に見極める能力。この能力だけは、男の人にかなわないなあとホントに思う。
ありがちな言い方だけど、やっぱり大昔に外で狩りをしていたからかもしれない。自分の強さがどの程度か瞬時に判断できないと、生き延びていけなかったのかも。
というわけで、男の人は自分の居場所の中で、自分がどういう位置にいるか、だれが自分のボスで、だれが自分の手下なのかをハッキリ理解している。そうしないと居心地が悪くて、落ち着かなさそうでもある。
◇
さて、男の子がどういう基準で自分よりも「強い、弱い」の判断をしているのかというと、カラダの大きさとか、年齢が上か下かとか、そういうのはあまり関係なさそう。
その判断の基準は、なんだろう、生き物としての強さ。その人が生まれつき持っている生命力、輝き、パワー。しぶとさ。粘り強さ。芯の強さ。ダメージを受けたときのタフさみたいなものをモノサシにしているようである。
たとえば、散歩中にオスの犬同士が道で出くわしたとき、カラダの小さい犬が、図体はデカいが心根のやさしい臆病な犬に吠えかかり、本気で挑んだりするのを見ると、
(ああ、どっちが強いオスで、どっちが弱いオスかすぐわかっちゃうのねえ)
と思ってしまう。
人間の男子は吠えたり、いきなり殴りかかったりはしないけど、だれかとはじめて出会ったとき、目線で、心の中で「強いオス」「弱いオス」とすばやくランク付けをしていたりするはずである、たぶん。男ってタイヘンよね。
◇
そう考えてみると、女の子が日常生活を送るにあたって、彼(もしくは彼女)が自分よりも強いか弱いかはわりとどうでもいいことのような気がする。
たとえば、会社で人間関係を円滑にしようと心がけたいとき、女の子は、強さを前面に押し出さなくても、察しのよさや細かい気配り、やさしさ、聞き上手という武器を使えば、たいていの場面を乗り切ることができてしまう。生き物としての強さという、最終兵器を発揮する局面なんて、メッタにめぐってこない。
だから、どちらが彼女と彼、どちらが生き物として強いかなんて、ふだんからあまり気にもかけていないのである。
だけど、困ったことに恋愛関係という関係では、生き物としての強弱がふたりの関係を大きく変えてしまう。私は個人的に、恋愛関係においては生き物として女の子のほうが強いカップルのほうが幸せ度は高くなると思っている。ホレた弱みというのともツナがっているのだろうけど、つらいことや苦しいことって、弱い立場の側がより多く引き受けるハメになるから。
恋愛関係にあるふたりのうち、女の子のほうが強いと、男の子は勝手に彼女のために右往左往してくれるから、彼女は好き勝手に振る舞えて幸せ! と私は思う。
でも、どういうワケかこういう恋愛状態に不満を抱く女の子は多い。そいでもって、
「彼って、なんかモノ足りない」とか「いい人だとは思うけどつまらない」とか「落ち着いちゃってて刺激がない」とかいい出すのだ。
恋愛の醍醐味というのは、ホレられるよりホレること、追いかけられるより追いかけることにあるようだ。
特に、仕事をしっかりしていて経済力があったり、趣味に打ち込んでいて、生きる目標がバッチリ定まっているような、しっかりした女性ほど「好きになられるより、好きになるほうが好き」という人は多い。
で、プチヒモ男の登場である。プチヒモ男は、働き者でしっかりした性格、男気のある女性のところにススーッと近づいてくる。
働き者な上にしっかりしているタイプの女性は、責任感も強ければ気も強い。けれど、実はその反面とってもデリケートだったり、涙もろく情に厚かったりする。一見強そうに見えても、実はけっこう弱い部分がある。そこに、
@長女性格。
A家族や親しい人にも気を遣ってしまい、NOがなかなかいえない。
B約束は必ず守るマジメな性格。
Cお金を貯めるのは上手。
D面倒見がいい。
という要素が加わったら、ちょっと気をつけたほうがいいかもしれない。プチヒモ男は、こういう女性のところにトコトコやってくるのである。
◇
話をさいしょに戻すと、プチヒモ男はたいていの男の子より、さらに「相手と自分とどちらが強いか?」をかぎわける嗅覚が鋭い。自分の能力をよ〜くわかっていて、もちろん、自分よりちょっぴり弱い女の子のところへ走っていく。
プチヒモ男は、一見捨て犬のような哀れを誘う顔をしていても、実はしたたかなのである。線が細く、か弱そうにみえても、生き物としての強さはわりとあったりするのだ。
気が強く責任感の強いマジメな女の子は、さいしょのうちはプチヒモ男の存在意義が理解できない。
(なんで仕事もしてないのに「のほほん」としていられるの?)
しかし、彼がいったん「ミュージシャンになるのが夢なんだ」とか「弁護士の資格を取るのに万年浪人中なんだ」とかいうと、無職は「夢を追う人」にすりかわる。そして、彼とわが身を引き比べる。
(ストレスいっぱいで、会社勤めしてアクセク働いてるあたしとは大違い。夢のために、会社勤めをしないなんて潔い。あたしにも、そんな勇気があれば……。でも、ダメ。何のアテもないのに会社辞めたりしたら、親に説明できないし。せっかく周りの期待にこたえていい会社に入って仕事してるのに。どう転んでも、あたしは彼みたいにできない。ああ、自由に生きてる彼がうらやましい)
あとで冷静になって考えてみると、働きもしないで食わせてもらっておいて自由もへったくれもあるかい! と思うのだけれど、恋しているときはラブ・ワールドの住人になっているわけだから、何事もいいようにしか解釈できないものである。
プチヒモ男は自分よりもちょっぴり弱いところがあるけれど、それを仕事や責任感で克服している、非常に甲斐性のある女の子のところに転がり込んでくるのだった。
◇
知人であるOさん(36歳)のところには、いつもプチヒモ男がやってくる。彼女は、フリーランスでヘア・メイクの仕事をして、ひとり暮らしをしている。ものすごく働き者で、おしゃれで、マジメで、甲斐性のある女だ。
あるとき彼女は、9歳年上の仕事先で知り合った男を家に住まわせていた。
彼は独身だったけれど、成田空港の近くの実家に住んでいたので、仕事帰りにそこまで帰るのが面倒になったという。そこで、職場から近い彼女の住むマンションに泊り込むようになった。
気が付いたら土日も実家には帰らなくなっており、彼女のところから競馬に通うようになっていた。しかも、
「元手がないから1万円ちょうだい」
と、彼女のお金で競馬に行くのである。1万円が2万円になり、2万円が3万円になったころ、Oさんはわたしにいった。
「そろそろ結婚のこととか考えるべきかと思うんだけど、人のお金持って競馬に行く人ってどうかと思うよね?」
結婚を考えていた、ということ自体わたしは驚いた。けっきょく、その後すぐに彼とは別れたけれど、その理由は、
「彼、うちにいる間にどんどん太っちゃって。100キロ近くになっちゃったのね。そんなに太りやすい体質の人と結婚して、子どもに遺伝しちゃったら……と思うと心配になったから、やっぱ結婚できないと思って別れたの」
と、なんだかよくわからないものだった。
それにしても、45歳にもなって、プチヒモになるなんていったいどういう男だろう、100キロの体重よりそっちのほうが問題ではないかとわたしは思った。
◇
その後、彼女は10歳年下の自分と同業のヘア・メイクアーティストの男の子と付き合いはじめた。案の定、彼は彼女のマンションに転がり込み、そして仕事を辞めた。
「オレの夢は沖縄の自然を守ることなんだ。オマエが働いてくれてるから、オレは夢にかけることにした。これからは沖縄にいく資金を貯める」
そういって彼は、なぜか深夜のコンビニでアルバイトをはじめたという。
「でもね、どう考えてもコンビニで働くより、この仕事してたほうがお金は貯まるはずなのよ。彼、ちょっとヘンだよね。それに、あたしにいっしょに沖縄に行こうっていうわけでもないのよね」
とOさんはいう。
もしかして、働きたくないから、住むところがないから彼女のところにきたのではないか? いっしょに住んでいる間は顔を合わせないようにわざわざ深夜にバイトをはじめたのではないだろうか? と疑わずにいられなかったけど、証拠もないのにそんなことはいえない。
しばらくすると彼は、お金になりそうな彼女の家財道具を持っていなくなった。
「テレビは買ったばかりで気に入ってたのに、ひどいでしょ。困っちゃった。それにね、沖縄のことはどうなったかと思って人づてに聞いたら、なんと沖縄には行ってないらしいのよ。ひどいでしょう?」
とOさんはいう。わたしだったら、男と別れるときは彼の情報なんて絶対に耳に入らないように、徹底して縁を切るのに。別れたあとも、彼の消息を気にかけるOさん、やさしすぎる……。
◇
プチヒモ男は便利な存在である。面倒をみてあげているのだから、家に住まわせてあげるのだから、彼女にとって必要な存在でなくなったら、いつでも捨てることができるような気がする。
ホントにいい男があらわれたら、すぐさまそっちにいっちゃおうと考えたりもできる。 他の男の子とデートしてもそんなに罪悪感がわかない。なぜなら、プチヒモくんには利用されているような気もするから。
なんとなく、うっすらと「あたしって利用されてる?」と心のどこかで気付いているから、いらなくなったら捨てようと思えるのだ。
実際にそんなふうに割り切って、プチヒモくんを捨てられる人はなかなかいない。でも、それができると思っているのといないのとは大きな違いがある。
彼に利用されているのと同じように、もしかしたらあたしも彼を利用しているのかもしれない。彼をまるごと引き受けるのはやっかいだから、都合のいい部分だけを受け取ろうとしているのかもしれない。
プチヒモ男は、女の子のそんな心理をしっかりわかっている。だから、彼女に必要な部分だけを提供してくれる。プチヒモ男の魅力はそこにあるような気がしてならない。
そのかわり、プチヒモくんだって、自分がほしいものをちゃんともらっていくし、絶対に「心」はくれない。
ひとり暮らしの心細さを埋めてくれる温かさだけじゃなく、彼の心もほしいと思ったら、とりあえずあなたに養われたがったり、あなたのお金を持っていったりするプチヒモ男とは手を切ろう。
そして、今度だれかを好きになったら、自分のほうも都合のいいところだけを受け取ろうとするのではなく、すべてをもらう覚悟を見せるべきだと思う。そういう恋愛をするのは、まだ先でいい! と断言できるなら、それもありだけど。でも、そんなふうに割り切りができて、心のキズも早く癒えるのは周りを見ていても、20代前半までという気がしている。加齢とともに、恋愛のキズは治りにくくなってしまう傾向にある。
女心を大切に受け止めてくれる男は、絶対にヒモにはならないはずだから、次に恋愛するときはそういう誠実な人の「よさ」をシミジミ感じてほしいと願わずにいられないわたしである。
|