彷徨える能役者あり。
若くして、芸の道に悩み、悶死したのであろう能役者は、彷徨える能役者となる。その魂魄は、人々の心を揺さぶる芸能の花(真髄)を求めて、蒼き星に吹き廻る風にのり、時空を超えて漂泊する。
古来、大陸より渡来した芸能は、我が国において独自の芸能として花開いていった。彷徨える能役者は、芸能の花とは何かを求めインドに至る。そこで彼は、西へ渡来していった独特なロマ(ジプシー)の芸能を知り、その道を辿って風にのりスペインに降り立つ。
彷徨える能役者が、アンダルシアの広場にいる。
能役者は、広場でロルカの詩のドゥエンデ(魔力)に惹かれて歌い踊るロマの人々を見ている。
能役者は、ロルカの詩を詠みつつ、ロマの人々の傍らで、彼らの情熱、意気を感じている。
彼ら(ロマの歌い手・踊り手・演奏者そして周囲の人々)には能役者が見えない。しかし、彼らは踊りの世界に入り込んだ時、ふと能役者の存在を感じる時がある。
やがて、アンダルシアに咲く芸能の花の一輪を観た能役者は、また風に抱かれるように、次の花を求めて、消えていく。
この作品は、能楽師の語りにより、能の舞台空間を想起させ、そこにフラメンコの世界を現出させたものである。
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