クラス替えテスト=運命的な出会い!?

86年、ロンドンの語学学校で知合いました。国際カップルには良くあるパターンですよね(笑)。元来フレンドリーな性格のスペインの人達とは、知合いになりやすかったです。同じ学校でも、初めは別々のクラスでした。クラス替えのテスト後、先生から「1点足りなかったから別のクラスに移ってね…」と言われて、移ったクラスに夫が居ました。それまでは時間帯も教室の階も違ったので、そのテストがなかったら知合っていなかったと思います。

二人ともロンドンに2年半ほど滞在し、その後はそれぞれ自国に帰ることにしました。日本に戻る前に、3ヶ月ほどスペインに滞在。そして、帰国後は仕事をしながら1年半ほど“遠距離恋愛”。私はその間、日本で子供達に英語を教えていました。夫はイルン市内の事務所で臨時の仕事をしていましたが、ナバラ県のレサカという街で英語教師の仕事が見つかりました。そこで、私の家族に会うために来日することになりました。

結婚するまでに大変だったのは、私の家族の理解を得ること…、でしょうか。日本に帰国した頃、ちょうど適齢期(苦笑)でもありましたので、お見合いの話を持ってこられたりしました。そんな中『スペイン人との結婚を考えている』というのは、家族にとっては一大事でした。

家族には『スペインは未知の国』!どんな相手かも想像がつかないし、「そんな遠くにはやりたくない」と泣かれた時は困りました。自分が子供を持ってみて、その時の家族の心境が良くわかります。それでも、いつも私の行動に理解を示してくれていた父が「自分で大丈夫と思うなら、いいだろう」と、他の家族との間に入って色々と話をしてくれました。


日本とスペインでの結婚披露宴

89年、夫が私の家族に会うために来日した際、形式的な結婚式はできませんでしたが、披露宴のようなものは2回行いました。手作りの式で良いとはいえ、やっぱりウェディングドレスだけは着たいと思いました(笑)。近辺では全て式場や披露宴とセットになっていて「ドレスだけ借りる」というのができませんでした。あちこち探し回った結果、やっと気に入ったドレスを購入することができ、スペインの披露宴でも同じドレスを着ました。

日本での披露宴の一つは、私の友人達だけと近くのレストランで行いました。小規模だったので、来ていただいた方々とゆっくりお話することができたのが良かったですね。また、高校の同級生が余興なども企画してくれて、和気藹々と楽しく過ごしました。

もう一つは、私の親族と近くの料亭で…。夫はこの日初めて私の家族・親戚一同と対面だったため、かなり緊張していたようです。また、家族・親戚も相手がどんな人物か興味津々だったようです。夫は今でも時々、その時のことをスペインの人達に「かしこまった席だから礼儀正しくしないといけないし、何でも我慢して食べてやると思った!でも、エビが生だったからどうしようかと思って箸でつまんで眺めてたら、皆が一斉にこっちをじーーーっと見てるから仕方なく口に入れて飲み込んだよ、うぇ…」と、話して聞かせています。

スペインの結婚式は、私はカトリック信者でないため教会での式は挙げられないので、市役所内で手続きをしました。立会人の前で誓いの言葉を述べ、書類にサインをするだけで、ものの10分もしないうちに終わりました。その後、家族や知合いと近くのレストランで食事をしましたが、スペインの披露宴につきものの生バンド演奏のダンスパーティーは無しでした(笑)。

式そのものはあっけなく終わりましたが、結婚の手続きに必要な書類集めなどにはやはり時間と手間がかかりました。これは経験者の方にはおわかりいただけると思いますが…。

主婦として、仕事を考える

スペインで生活されている多くの国際カップルの皆さんが経験済みかと思いますが、スペインでは日本のように簡単に主婦のアルバイトやパートは見つかりませんよね。私も通訳や翻訳の仕事は経験がありますが不定期でしたし、次男が生まれて「急な呼び出し」には応じられなくなったので、何か良い方法はないかと思っていました。

97年になったばかりの頃、少し間をおいて2つのTV番組を見ました。「インターネットの普及状況」と、「通販がブーム」という内容でした。その時、頭の中で「インターネット」で「子供服通販」という図式が出来上がりました。ところが、当時は家にPCもありませんでしたし、実際それまでPCには触ったこともなかったのです(苦笑)。アイディアだけはどんどん沸いてきたので、夫に「パソコンを買ってインターネットで子供服を日本に売りたいのだけど」と話すと、その内容を理解してもらえず「そんな贅沢なものを暇つぶしの為に買おうなんて」と却下されました。

私は「良いアイディアなのに何でわからないの?」という一心で、今度は「企画書」を書き上げました。男性というのはそういう風に数字やら何やら具体的に目に見える物は検討に値すると思うのでしょうか!?今回は、夫もパッと顔が明るくなって「これはいけるかもしれない」と言うのですよ!何でしょうね…、この態度の違いは(笑)。そして去年3月には、実店舗を持つことができました。

バスク地方“イルン市”での生活

私は可能なら旅行もしたいタイプですが、夫は出不精です。それに、現在、平日は実店舗の運営もありますので、行動範囲は狭いですね。週末は家族で映画を見に行ったり、近所を散歩したり…、日常生活はとても平凡です(笑)

スペインは「家族の繋がり」が強いですよね。良くも悪くも。良い点は何かと頼りになるところ、悪い点は干渉も多いところでしょうか。幸い(?)夫の親族とは付かず離れずといった関係で、クリスマスや 誰かの誕生日など特別な日に集まって食事する程度です。知合いの中には「毎週末、お義母さんのところに顔出さないと『具合悪いの?何か気に入らないの?』ってうるさいのよ。たまには他のこともしたいのに…」とストレスをためている人もいますが、その点我が家は楽なほうですね。

バスクに住んで良い点は、自然が一杯で、食べ物もおいしいです!バスクの人は打ち解けるまでに時間がかかりますが、信頼できるので付き合いやすいです。ETA(テロリストグループ)の問題ばかりが取り沙汰されますが、あれは益々少数派・過激派化する一方で、一般市民は賛同していません!日常生活は平穏ですし、治安も良いです。

バスク語がわからないと生活に不便というのは、バスク内でも住む場所によってかなり状況が違うと思います。小さな村だったら大変かもしれませんが、都市部ではスペイン語しか話せない人も多いですし。イルン市は人の出入りも多いので比較的オープンな環境だと思います。ただ、娯楽性には欠ける場所です。仕事で忙しくしていなかったら、すごく退屈してると思います(苦笑)。


出産、子育て、子供の教育について

長男出産の時(91年)は初産ですし、まだスペイン語もあまりわからなかったので不安に思っていることを相談してみるというのもままならなかったのです。でも、幸い医療体制が良かったので特に難なく事が運びました。最大のメリットは、公立の医療サービスを利用したので月毎の検診・妊婦学級・出産・二人部屋での入院費用が全て無料だったことです。これは本当に助かりました。

夫は長男が新生児だった頃のほうが、子育てにもっと協力的だったような気がします。でも、私の不満が爆発しない程度には手伝ってくれたと思います(笑)。オムツ替えや沐浴の手助けなどは良くやってくれましたが、ゆったり構えて付き合わないといけない食事時や着替えなどはわりとすぐにギブアップしてました。根が短気なので…(苦笑)

夫は頑固オヤジそのものです。今は日本でも少なくなったタイプですね。「礼儀正しく」「嘘をつかない」「人に迷惑をかけない」など、「子供には厳しく言い聞かせなくちゃいけない」っていつも言ってます。自分のことはともかく、説教するのが好きなんですよ(苦笑)。でも家庭には、少しくらい厳しい人がいたほうが子供の躾のためには良いと思います。

教育事情ですが、最近スペインも早期英語教育ブームのようで学校での開始年齢がだんだん早くなってきています。もしカリキュラムが良く教師の能力も整っていれば早くても良いと思うのですが、実際の状況をひとづてで聞くとそれほどの授業レベルではないようです。まず母国語での理解力・コミュニケーション能力をつけることが第一だというのが私達夫婦の考えです。

ちょうど長男が思春期に入った頃なのですが、本人はまだ将来やりたい事などはわかっていないようです。親としても、子供達それぞれの性格を生かした道に進んでくれれば・・程度ですね。今の時点では。ただ、「学校での勉強は大事なものだからしっかりやっておかないと将来困るよ」ということはうるさく言っています。あとはできるだけ子供達とじっくり話す時間を持って一緒に考えていけたら良いなと思っています。

これからの生活について

家族で小旅行などに出かけたいですね。スペインに住んでいても他の地方にはほとんで行ったことがないので。まずバルセロナに行きたいと思っています。それから、きっかけの地ロンドンにも子供達を連れて行きたいです。たまには日本にも里帰りしたいですし…。

身近な所では、まだ試していないグルメなレストランで食事したいですね。バスク地方(特にギプスコア県)には、カテゴリーの高いレストランがいくつもありますので、1軒ずつチェックしていきたいです。

ネコも飼いたいです。ネコの動き、姿を眺めていると癒されます。でも「庭付きの家で飼ってやらないと可哀想だからダメ」というのが夫の意見なので、引っ越すか離婚しないと飼えませんね(笑)

今までも臨機応変で過ごしてきましたから今できること(仕事)をしっかりやって、楽しんで生活していれば将来もなんとかなる、と楽観的に考えています。現在を精一杯生きる、というラテン気質に染まったのか元々その気質を持っていたのかどうかわかりませんが(笑)。過去を悔やまず、将来を悲観せず、「今」を大切にしたいと思います。

取材・文 浅野ひろ子

金栗里香さんが経営する子供服ネットショップ「チキ・エチェア」

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