カンテフラメンコへの招待席

Vol.2 カンテ:ドローレス・アグヘータ  ギター:俵 英三


ドローレス・アグヘータからのメッセージ 関係者からのメッセージ

ドローレス・アグヘータと俵英三

「カンテ(唄)の魅力を日本に紹介する」という主旨でギタリスト、俵英三さんがプロデュースする「カンテフラメンコへの招待席」。2回目を迎える今回は“フラメンコ界の至宝”と呼ばれる歌い手、マヌエル・アグヘータの娘であり、自らもヒターナ気質あふれる歌い手として知られるドローレス・アグヘータを迎えて行われる。
「『僕』が感じるカンテフラメンコをずっと紹介していきたい」と意欲的な俵さん。ぜひこの機会に貴重なカンテフラメンコに接してみませんか?

俵英三さんにインタビュー。

公演日程

●4月10日(土)14:30開演<三重/アスト津 アストホール> 料金:¥3,000(全自由席)
問い合わせ先:Tel・Fax:三重フラメンコ協会事務局0598-21-2391

●4月11日(日)18:00開演<大阪/西九条 クレオ西大阪> 料金:¥前売¥5,000 当日¥5,500(全席指定)
問い合わせ先:トゥリアナ企画080-3762-9166

●4月13日(火)19:30開演<東京/新宿 エルフラメンコ> 料金:前売¥5,000 当日¥5,500(1ドリンク付)
問い合わせ先:アクースティカ03-5750-7521(通販部) 03-3473-5678(目黒店)

●4月14日(水)20:00開演<東京/高円寺 カサ・デ・エスペランサ> 料金:¥6,000(2ドリンク付)
問い合わせ先:昼間03-3383-0246(セルバ) 夜間03-3316-9493(カサ・デ・エスペランサ)


―ドローレス・アグヘータは初来日ですか?

 いえ。4年前に3歳児を連れて初めて来日しました。実は彼女は自分の家からあまり外に出たがらない人で、亭主と僕が執拗に勧めた結果、しぶしぶ遠い日本まで来てくれたんですけどね。まだ乳離れしない3歳児を連れて行く、という条件で。とにかく家族を何よりも大切にする女(ひと)なんです。


―その時も、やはりカンテ・リサイタルという形ですか?

 はい、そうです。福岡、熊本、東京でやりました。その頃、日本ではカンテだけのステージというのは非常に珍しく、受け入れ側も躊躇していたみたいだったんですが、予想をはるかにうわまわる反響がありました。福岡や熊本では、彼女のカンテを聞いて涙してた方が多かったですよ。


―それほど他のカンテと違うのでしょうか?

 違いますね。プロのカンタオールの殆どは、聴衆を意識して、そして効果を考えて唄いますよね。聴衆に受け入れられ易い歌詞やメロディー、リズム等を好んで唄う、ということです。ところが彼女は、自分の心が感じたままを唄うだけで、そこに何の仕掛けもないんです。ごく自然なんです。

他の言い方をすれば、お金のために唄うのではなく、唄わずにはいられない必要性があって唄っているんですね。それだけ彼女にとってカンテは生活の中の重要な一部であり、心の支えでもあるんだと思います。カンテ・プーロなんです。今のように、つくりものばかりがやたらと溢れている中で、彼女のカンテのように純粋で、飾らず、力強いものに触れた時、例え歌詞の意味がわからなくても、それを聞いた人は感動するんでしょうね。


―ドローレスの伴奏をされる時、他のカンタオールの伴奏をする時と違うところと言えば?

 アグヘータ一族のカンテは他のカンタオール達と比べるとあくまでも自然、というところですかね。僕ら外国人は、フラメンコ芸術に取り組む時、まず形から入って行きますよね。1・2・3…とか。そういうパターンの中で伴奏しようとしても彼等の伴奏は決して出来ない、ということです。

他のカンタオールの伴奏をする時ももちろん、パターンだけで伴奏しているわけではないのですが、アグヘータ一族のカンテは特に、その辺りがデリケートです。慎重に慎重に、彼等の息遣いや心の流れを汲み取っていかないと…。

彼女を最初に日本へ連れてくる時、飛行機の中で彼女は、何時間にもわたって自分の生い立ちを僕に話し始めたんです。どうしていきなり僕にそれを話すのか、と尋ねたところ、自分の生い立ちを知らなければ自分の唄の伴奏は出来ないだろう?なんて言うんですね。それを聞いて僕はガツーン!と頭の中を殴られたような気がしました。正直言って、その瞬間まで僕は、唄の伴奏がそれほど奥深いものだとは思っていなかったんです。

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―日本ではいいアーティストのカンテを聞く機会が少なく、まだカンテの魅力を知らない人が多いという感がありますが?

 最近は、何がいいアーティストなのか、その判断の基準が色々とあって、ややこしいですけどね。いずれにしても、最近の日本の現状は決して悲観的ではないと思いますよ。

一般に人気の高いアーティストのみならず、アグヘータやチョコラーテ、ランカピーノといったプーロなアーティストも続々と来日していて、その貴重なアルテに触れる機会は多いですからね。ただ、その殆どが東京だけに限られていて、地方の方にはなかなかその機会がないですね。これからは、なんとか東京以外の地域でもカンテ・コンサートを企画していこう、と僕も仲間達といつも話しています。


―俵さんご自身がカンテの伴奏をしておられるのは、やはりカンテに魅せられてということですか?

 そうですね。少し意外に聞こえるかも知れませんが、そもそも僕はギターとか音楽とか、そんなに好きじゃないみたいです。それよりもアンダルシアとかヒターノとか、昔からのヒターノ気質のフラメンコの世界、それがたまらなく好きなんです。

でも僕一人ではそれを感じることが出来ません。ですからその世界に参加する唯一の手段としてギターを弾いて彼等の伴奏をしている、そんな感じですかね。特に、カンテ伴奏をするということは、唄っている本人の心の世界に誰よりも深く入っていけますからね。


―今回、日本公演を前にして、ドローレスとは練習する機会はいっぱい持てましたか?

 はい。彼女が住むヘレス郊外の家に通って、昼食をご馳走になったり、色々な話をしたり、4人の子供達の遊び相手になったり、とそんなことばかりで、ギターで彼女のカンテを伴奏したのはほんの1 、2回ですけどね。それも彼女がふいと唄いたくなった時だけです。

そもそも彼女はカンテの練習はしません。彼女はいつでも、上手く唄おうなんて少しも思っていませんからね。今回は遠い日本で、自分のアイデンティティでもあるカンテを僕(伴奏者)に託すわけですから、彼女が僕に一番求めているのは信頼関係です。それも家族ぐるみのね。彼女は今、心のどこかで、「唄う」という気持ちを日本でのコンサートに向けています。本番ではきっと、素晴らしいカンテを聞かせてくれると、僕は確信しています。


―「カンテフラメンコへの招待席」としては2回目になりますが、今後も定着させていかれますか?

 はい。もちろんそのつもりです。これからも「僕」が感じるカンテフラメンコをずっと紹介していきたいと思っています。ステージ上では、僕は一人の伴奏家ですが、それをプロデュースするのは僕自身です。主語はあくまでも「僕」ですから、これは自分のリサイタルだと思って、これからも頑張っていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。

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